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『ネットは新聞を殺すのか?』&『新聞のなくなる日』(その1)
~100年守った新聞のビジネスモデルが壊れ始めた~
東京財団特別研究員、元毎日新聞社取締役編集局長 歌川 令三 氏
時事通信社編集委員 湯川 鶴章 氏
こうした中、経験豊かな二人のジャーナリストがインターネットによって新聞がどのように変容していくのか独自に調べ、刺激的な著書を刊行した。
時事通信社編集委員である湯川鶴章氏は『ネットは新聞を殺すのか 変貌するマスメディア』(NTT出版、共著)を著し、元毎日新聞社取締役編集局長の歌川令三氏(東京財団特別研究員)は『新聞がなくなる日』(草思社)を世に問うた。新聞はいったいどこに向かっていくのか、お二方に聞いた。
文/吉村 克己
2006年4月3日
新聞がどうなるか後輩に伝えたい

左:東京財団常務理事 吹浦忠正氏(司会)
中:東京財団特別研究員、元毎日新聞社取締役編集局長 歌川令三氏
右:時事通信社編集委員 湯川鶴章氏
――新聞社の元編集局長である歌川さんが『新聞がなくなる日』という本を刊行されて、おそらく新聞は書評として取り上げないのではないかと思っていたら、いろいろな新聞に大きく取り上げられました。この本によって新聞社も自分の行く末について大変、真剣になったのではないかと思いますが。

東京財団特別研究員、元毎日新聞社取締役編集局長
歌川令三氏
歌川:
私は1958年に新聞記者になり、88年まで30年間、毎日新聞におりました。それが『新聞がなくなる日』なんていう本を出したものですから、後輩たちは「こんなタイトルの本を書くとは何事だ!」と怒っております。これは後輩たちを冒涜するのみならず、お前の人生にとっても天につばする行為だと。まったくその通りでして、敢えて承知で書きました。
なぜならば、新聞記者というのは自分の会社の経営にあまり興味を持っていないからです。そういう記者の中で一番無難な人が結局、社長になる。もともと経営のことは知らないくせに、新聞記者は経営や営業という行為は少々低級であると考える文化があるんです。だから、一般紙、大新聞というビジネスモデルがもうおかしくなっているんだということに気がつかない。
私は毎日新聞で2年間だけ、嫌々ながら経営企画室長という仕事をいたしました。そのときに新聞の経営というものについて考え、資料を集め、その結果がこの本にまとまったのです。確かに私は自分の人生の半分くらいにつばを吐くことになったかもしれないが、やはり新聞のおかれた状況をみんながもっと認識すべきではないかと考えたのです。
そうしなければ、「新聞記者はとにかく記事を書けばいいんだ」「おれの書いていることは正しいんだ」という傲慢さを持ったままで後輩たちは終わってしまうだろう。そのまま墓場に入ることができれば、その人はとても幸せですが、きっとその前に「しまった」とみんな思うのではないか。それだったら今のうちに、新聞というのはどうなるのかということを後輩に知っておいていただきたい。そういうつもりで書きました。
私は本のあとがきに「いま私の頭の中で二人の私が葛藤している。“智に働く私”と“情に棹差す私”だ」と書きました。いま述べたことはまさに「智に働く私」です。だが、もちろん情念としては絶対に新聞はなくなってほしくない。そんな葛藤の中で、このような本のタイトルになったのです。
新聞記者の楽しさを受け継いでもらいたい
――湯川さんのお書きになった『ネットは新聞を殺すのか 変貌するマスメディア』というタイトルもまた歌川さんの本に負けないほど刺激的です。しかも、さらに今年の5月には「それでは新聞はどうすればいいのか」というもっと新しい内容を含んだ本を出版されるご予定とうかがっています。

時事通信社編集委員
湯川鶴章氏
湯川:
私が生まれたのが1958年ですから、歌川さんはその年に新聞記者になられた、まさに大先輩です。私の本で不足している内容は歌川さんの本でほとんどカバーされていると思いました。
私自身も歌川さん同様、新聞記者という仕事が大好きです。こんなに楽しい仕事がほかにあるのかなと思いますね。週末になると、早く月曜日になってくれないかな、仕事をしたいなと本当にそう思ってずっとやってきました。ですから、この楽しさも後輩にも受け継いでもらいたいと思っています。
だが、新聞はいま大変なところにさしかかっています。私は専門が情報技術ですから、情報技術が新聞業界をどう変えていくのだろうかと5年前に思い始めて、取材や調査をし、2年前にこの本を書きました。
私としては「どうすればネット時代に新聞社・報道機関が生き残れるのか」という視点でずっと取材・調査・執筆してきました。それで、この本も当初は『インターネット時代の新聞経営とは』というタイトルを考えたのですが、出版社が「それじゃ、売れない」というので、反対したんですが、結局こういうタイトルになった次第です。
本のタイトルを見た知り合いの新聞記者から「おれたち殺されるんだ」なんて嫌みをいわれるんですが、実はそんなことはひと言も書いていないんです。新聞がネットに殺されるとは思っていないし、こういう状況でもなんとか新聞は生きていかなければならないという前向きな姿勢で書いているつもりです。
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