中国の大気汚染が日本を襲う?!(前編)

経済発展と引き換えに失われるものとは

――健康被害としては、中国で年間40万人が大気汚染の影響で死亡しているという昨年の報道については、どうお考えですか。

近藤:
 中国では大気汚染に関する研究がようやく本格化し始めたばかりなので、信憑(しんぴょう)性のあるデータが存在しません。そうなると疫学的調査も困難を極めるはずであり、本当に大気汚染による死亡なのかは疑わしいところです。もちろんこれだけ汚染が進んでいるので、亡くなった人もいるとは思いますが、40万人という数字が信頼できるかどうかは疑問です。

 それよりも、私自身は多くの人が病気に苦しんでいる国として捉えています。経済成長期にはどうしても弱者切り捨て、すなわち経済発展のためには多少のことは仕方がない、というような風潮になりがちです。かつての日本も高度経済成長期には実際に公害などの被害が続発しました。

竹川 暢之助教授 東京大学先端科学技術研究センター
竹川 暢之助教授

竹川:
 高度経済成長に沸いた40年前の日本の大気汚染の濃度は現在の2~3倍でした。ロサンゼルスでは1950年代に光化学スモッグの問題が発生し、1960~1970年代には日本でも関心が高まりました。そこから環境に関する研究も盛んになり、対策のためのインフラが整っていったという経緯があります。そうした日本の経過を踏まえれば、中国ではもっと早くから大気汚染に対する関心が高まっても良かったはずです。ところが、経済発展との兼ね合いもあり、関心が高まってきたのは、最近になってようやく、というのが現状です。

――後編では今後、中国と日本、さらにはアメリカやヨーロッパも含めた北半球の国々が、大気汚染の問題にどう取り組んでいくべきかについて考える。

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