- HOME
- >> セーフティー・ジャパン
- >> インタビュー
アスベスト住宅対策の解説インタビュー
4. アスベストを含む建材の見分け方
Q:アスベストを含む建材を簡単に見分ける方法はありますか?
A:簡単にというわけにはいきません。疑わしいものは注意することですね。
──アスベスト粉塵はどのくらい遠くまで浮遊していくものなのですか?

池田:
アスベストというのは、結構、細かいもので、長さが1マイクロメートル以下というものが多い。空気中にふわふわと浮遊していて、ほとんどガスやタバコの煙と変わらない挙動をします。粒子径の大きい埃のような粉塵はそんなに遠くまで飛散する恐れはないですが、アスベストの場合は粒子径が小さいので、煙とか普通のガスと同じように広がると考えてよいでしょう。
ただそうなると、どのくらいの濃度なら危険で、どのくらいの濃度なら危険でないか、ということが問題になってくるのですが、アスベストの場合は、それが一概に言えない。
「これ以下なら問題ない」という数値を「閾値」(いきち)というのですが、アスベストの場合は放射線などと同じようにこの閾値を設定しないことになっています。どんなに濃度が低くても、低いなりのある確率で健康被害を引き起こす可能性あるからです。
普通の汚染物質は「閾値」を見つけてから、その閾値に安全係数を掛けて環境基準というものを出すわけですが、アスベストの場合の「1リットル当たり10 本」というのは、別の見方から出したもので、これ以下であれば安全というものではないのです。一応、この「空気1リットル当たり10本以下」というのが目安にはなるでしょうが……。
──アスベスト粉塵を含んだ建材を見分ける方法は?
池田:
もちろん表示されていれば分かるわけですが、見た目では判断できません。比較的手軽なものでは「位相差顕微鏡」という装置で見る方法があります。
普通の顕微鏡では植物繊維、グラスウール、ロックウールなどとの見分けがつきにくいのですが、位相差顕微鏡というのは、偏光した光を当てる。そうするとアスベストはちゃんとした結晶体ですから、ある角度から見ると見えなくなる。普通の光で見えて、ある角度で見えなくなると、それはアスベストであると考える。もっと厳密な方法ではX線を当ててその反射の具合から、アスベストかどうか、どんな種類のアスベストか分かりますが、まあ、いずれにせよ(一般の人が)気軽にできるものではありません。
──日本では、なぜアスベスト対策が後手後手になってしまったのでしょう。
池田:
なぜ日本ではアスベストがこんなに使われたのか──やはり材料の“生産者保護”という側面があったのでしょうね。特にアスベストを含んだ建材、アスベスト板などをつくっている会社には零細なところが多かったという事情もあって、すぐに全面禁止はできなかった。そういった産業に影響が出るということで。その点ではやはり判断が甘かったですね。いまだにつくったものは禁止できていません。やっと最近の報道によって、既に生産されたものの使用も止めようかという話が出てきましたが……。
アスベストによる健康被害自体は、それこそ半世紀も前から懸念されていました。WHO(世界保健機関)が30年ほど前に「これはまずいぞ」と認めてから、欧米ではいち早く生産を中止し、流通も中止した。日本の場合はその当時、まず吹き付けはやめようと。それから「クロシドライト」(青石綿)は毒性が強いから使用禁止にしようと。一方でよく使われている「クリソタイル」(白石綿)は量も多いし、それほど危険性はない。零細業者が多いということで、国の判断として30年も猶予してしまった。これがまずかったということですね。
29年前、当時の労働省もその危険性については認識していた。私どものような空気汚染の研究をしている者にとってもそれは常識でして、アスベスト労働者の作業着に付いていて、それを奥さんが洗濯するときに暴露を受けると。それは言われていたことでした。
知ってはいたけれども、縦割り行政が裏目に出たのでしょう。本来、労働環境のことは労働省、家庭のことは厚生省という“垣根”があった。本来なら厚生省と労働省、環境省が一緒になって連絡会議などをつくるべきでしたね。
企業側にしても争われたら責任は免れないでしょうね。知らなかったとはいえない。責任は相当に重いでしょう。
──どうもありがとうございました。
池田耕一(いけだ・こういち)氏住まいや事務所ビルなどが衛生的で住みやすく、働きやすくなるように、住む人の立場から住まいの健康影響と対策について研究を行っている国立保健医療科学院の建築衛生部部長を務める。空気環境と室内空気汚染の専門家。著書に『室内空気汚染の原因と対策』など。
この連載のバックナンバー
- 2009年展望――失業率と犯罪の関係を読む (2009/01/13)
- 世界標準のセキュリティを日本市場に (2008/09/09)
- 新型インフル対策、地方の現状・世界の状況 (2008/08/08)
- H5N1型という“敵”に日本が採るべき策 (2008/05/16)
- 新型インフルエンザの“リアル”を語ろう (2008/03/28)

