【住宅事件簿】
壁内に入った水が抜けず、乾かない
放置すると構造材腐朽のおそれも
床上浸水で断熱材が水没

写真は復旧作業の様子だ。左上の写真は、ベタ基礎の床下で泥を除去しているところ。ベタ基礎に水が入り込むと非常にやっかいだ。上の写真(部屋側)と左中央の写真(床下側)でわかるように、床上20cm程度の浸水被害が起きた住宅の壁内では、断熱材が濡れてしまっていた。写真左下は浸水水位に限定して石こうボードと断熱材を除去した例(写真提供:住友林業)
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火災保険本体では不足
「水害特約」で明暗

 波多さんは、「容器の中に水を入れてグラスウールを浸してみたところ、吸い上がりは2 、3cm程度だった。このため浸水水位からわずかに上の位置までの断熱材を交換すれば十分だと思う」と話す。床上浸水の水位が低かった地域では、55ページ上の囲みのように、断熱材を足元の一段分だけ交換する工事も行われている。

 一段分に限るのは、可能な限り費用を軽減するためだが、それでも資金的に厳しくなるため断熱材の交換を渋るユーザーもいる。特に火災保険における「水害特約」の有無で、明暗が分かれている。

 通常の火災保険の場合、水害で被害を受けたユーザーが受け取れる保険金は火災時の5 %程度にとどまる。これでは費用が不足する可能性は高い。「水害特約」を加えていれば補修費のほぼ全額を受け取れるが、掛け金が10%程度高くなるため、特約を付けていないユーザーも少なくない。

 住友林業によると、床上浸水住宅の補修費は1 戸当たり300万~500万円。通常のリフォームの平均単価よりは少し高額になるという。住宅の1 階にはエアコンの室外機をはじめ、給湯器、洗面、キッチンなど、水に弱そうな設備機器が多い。補修費用が高額化する最大の理由はこうした設備の交換費だ。さらに内装工事も必要になる。

 満足に保険金が下りず、少しでも費用を安く抑えたいと考えるユーザーは、どうしても断熱材交換の優先順位を低く考えてしまうようだ。すぐに腐るわけではないだろうし、ひょっとしたら、木部が腐る前に断熱材は乾くかもしれない――そう考えるユーザーがいても不思議はない。

 だが住宅を長く使うという面では、主要構造に関係する部位の補修は重要度が高い。ユーザーのいいなりになるだけでは、そのユーザーの利益を長期的に見て損う可能性もある。住宅会社には、少なくとも、濡れた部分を覆い隠すように補修するのではなく、断熱材の乾き具合や木部の状態を確かめられる確認口を設置するなど、柔軟な対処が求められるだろう。(池谷和浩=フリーライター)

これだけは気をつけよう!

1. 床上浸水した住宅を補修する際は、壁内まで被害状況を確認する
2. 水害が予想される地域では火災保険に「水害特約」があることを施主に伝える
3. 新築の際は水害時の想定水位も考慮する

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