- HOME
- >> セーフティー・ジャパン
- >> 住まい
【住宅事件簿】
壁内に入った水が抜けず、乾かない
放置すると構造材腐朽のおそれも
床上浸水で断熱材が水没
2004年に各地で猛威を振るった洪水被害は、まだ終わっていない。床上浸水の被害を受けた住宅は5 万棟以上に達し、現在もその補修が問題となっているからだ。繊維系断熱材を用いていた住宅では、水に浸った断熱材がいつまでも乾かず、ユーザーの負担による断熱材の交換工事を余儀なくされている。壁内の補修をしなかった住宅では、土台などの主要構造部が腐朽する可能性も残る。(イラスト:勝田登司夫)
2005年9月15日
国土交通省の国土技術政策総合研究所がまとめた報告書、「平成16 年風水害の特徴と今後の課題」によると、 04年に被害を発生させた洪水は合計で10回。台風上陸が観測史上最多の10回に上ったほか、梅雨前線豪雨、集中豪雨もあった。河川の堤防が決壊した、台風接近に大潮が重なって異常潮位になった、などの要因で各地の住宅地に水が押し寄せた。
同報告書はまず、「これまでにない厳しい気象条件であった」と、04年が異常気象の「当たり年」だったと位置づけた。「被災の危険性が高い区域の土地利用が増大している」点も被害を広げた一因としており、昔より被災しやすい住宅地が増えていると指摘した。
報告書によると、04年に床上・床下浸水に遭った住宅の合計は、約17万棟にも達した(概要は「事件ファイル059」参照)。問題は、こうして水をかぶった住宅の補修工事だある専門家は、「補修工事の内容次第では、将来に禍根を残すおそれがある」と指摘している。
1カ月後も濡れたまま「これでは乾かない」
問題を起こすとみられているのは、床上浸水に遭った住宅の壁内で、断熱材が少なからずダメージを受けていることだ。
「水が引いてから1 カ月後に床上浸水した住宅の壁をはがしてみたところ、グラスウールはびしょびしょに濡れたままだった。いったん取り出して新しいものに交換しなければ、乾くまでに相当の時間が必要だろう」
住友林業住宅本部生産資材部長の波多健二さんは、そう話す。波多さんは同社高松支店などで補修工事を統括している。
木造住宅に限らず、水害に遭うことを前提につくられている建築物はほとんどない。特に木造住宅の場合、水が入り込むと、主要構造部の腐朽という二次被害を引き起こしかねない。濡れた繊維系断熱材が周囲の主要構造部の含水率を上げ、木が腐朽しやすい状況を招くことは容易に想像できる。
だが、水害は住宅会社が責任を持たねばならない「瑕疵」ではない。費用を捻出するのはユーザーであり、交換工事を承諾するかどうかはユーザー次第だ。それがこの問題をいっそう深刻にしている。
「床上1m以上浸水した地域では、1 階の壁内まで補修することに異論を唱えるユーザーはいなかった。だが床上5~20cmという地域では、水さえ引いてしまえば表面的には何ともない。京壁に水染みが出ていたり、枠材や床材が多少膨れて段差になったりしているが、我慢しようと思えばできるレベルともいえる。壁内の補修を納得してもらうため、説明には苦労した」(波多さん)
同社では状況に応じて、ユーザーの前で押入の壁をはずし、断熱材が濡れているかどうかを確認したうえで補修の承諾を得ていったという。手間のかかる作業だ。浸水被害を受けた地域からは、こうした面倒を嫌い、表面上の補修にとどめている住宅会社が少なくないという指摘も出ている。
この連載のバックナンバー
- 【住宅事件簿】シーリングに頼った軒のない設計構造部が変形、雨が吹き込む (2005/09/15)
- 【住宅事件簿】床のすき間から「羽アリ」が這い出る (2005/09/15)
- 【住宅事件簿】壁内に入った水が抜けず、乾かない (2005/09/15)
- 【住宅事件簿】河川沿いの盛り土造成地で噴砂現象 (2005/08/09)
- 【住宅事件簿】職人の捨てたハケ洗浄液が地中へ 元請けの工務店も慰謝料を負担 (2005/08/09)



