どこまでもつか、世界の不動産・株バブル

第1回
赤字会社「楽天」の株価は異常高か、まだ安いのか?
~世界的株高から見れば、日本の株は割安だが…~

経営コンサルタント 吉田 繁治氏
2005年10月31日

 ビジネスマンの間で人気を誇るメールマガジン『ビジネス知識源』では、良質な経営・IT・ビジネス・経済知識の提供を目標に、様々な情報発信をしている。著者の吉田繁治氏の諒解を得て、国際的な不動産・株バブルの趨勢と日本に及ぼす影響に関する論考を集中連載する。

 秋は地中海の冬に似て、空気に清透さがあります。思考を深める季節になりました。

 しばらくスペインを旅してきました。そのときの見聞をもとに、国際的に起きている不動産・株バブルについて論考してみたいと思います。 

 本稿は、おおまかに以下の点について語ろうと思います。

 (1)まず、高騰したスペインの住宅価格です。

 (2)そして、世界の不動産バブル、

 (3)及び、価格下落の10年余を経て、わが国にも再来した株価の上昇です。そして、都心部の一部での地価バブル。

【今回の目次】

 序.スペインと日本で起きていること
 1.スペインの賃金と住宅価格
 2.ユーロ高ではなくドル安だった
 3.膨らむファンドと低いGDP成長率
 4.安いと見られている日本の株価
 5.分岐点
 6.国際資金移動

序.スペインと日本で起きていること

 スペインに行って、びっくりしたのが、スペインのイメージに合わない至るところを掘り起こす建設工事と、不動産価格の高騰でした。まるでスペインは、工事の普請中のようです。

 15年前の不動産と株バブル、そして90年代のバブル崩壊を体験したわれわれ日本人には、「上がりすぎたものは、合理的な価格にまで下がる」ということが普通に了解できます。

 不動産や株の価格=実需の合理的価格+投機のバブル価格

 世界でもっとも冷静に、世界の不動産価格と株価を見ることにできるのは日本人です。上海の住宅が5000万円と聞けば、誰でも上がりすぎと思う。この経験的知恵は、エコノミストの分析よりも貴重です。

 しかし不動産も株価も、実のところ、上がりすぎがどれくらいの価格か、最適価格はどこか、この判断は難しい。この基準が分かるなら、投機で利益を得ることは容易です。合理的な価格の基準に照らし高すぎるものを売り、安すぎるものを買えばいい。

TBS・会見に臨む楽天の三木谷社長
TBS株取得で詰めかけた大勢の報道陣の前で記者会見に臨む楽天の三木谷浩史社長 (左端)(東京都内のホテル)
(写真提供:時事通信。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うこと は禁じられています)

 TBSの買収で話題の楽天の株価は、75300円(05.10.24)、時価総額(=会社の評価価値)は、8900億円です。05年2月には、1兆円を超え1兆2000億円くらいだったのです。

 簿価での純資産(簿価資産-負債)は、550億円に過ぎません。  (http://quote.yahoo.co.jp/q?s=4755.q&d=c&k=c3&z=m&h=on

 株価のひとつの有力な評価尺度であるPBR(Price Book Value Ratio:株価純資産倍率=株価÷1株当たり簿価純資産)では16倍です。

 会社の実業である連結売上は455億円、当期利益は142億円の赤字です(04.12月期) 赤字は、過去3年連続しています。

 東証一部上場企業のPBRは、2倍付近です。

 買収をうけたTBSの株価総時価は、村上ファンドと楽天が買いをかける05年8月前は、PBR(株価純資産倍率)で1倍付近(株価で2000円)を続けていました。つまり破格に安かった。

 今は3410円と1.7倍に上がっています。  (http://quote.yahoo.co.jp/q?s=%A3%D4%A3%C2%A3%D3&d=c&k=c3&h=on&z=m

 赤字の楽天は、PBRで、一部上場企業平均の8倍も高い価格をつけています。自社の高すぎる株価にもっとも不安を感じているのが三木谷社長本人でしょう。その焦燥が、不動産の実物資産を持ちながら、株価評価が低いTBSを買わせた。

 一部上場企業並みなら、株価9487円(PBR2倍:時価総額1100億くらい)の楽天が、8倍の75300円(時価総額8900億円と評価されるのは、どんな理由で正当か?

 この株価が正当であるという理由を挙げることができる人は、いるでしょうか? 9500円で取引されているから、その価格だということしか言えない。

 スペインの首都マドリッド郊外の、普通の住宅(100平米)は邦貨で6000万円~8000万円でした。平均所得は年収で300万円でしょう。

 所得倍率では、20倍以上です。住宅ローンを組んで買える価格は、所得の5倍、1500万円が正当でしょう。実際価格はその4倍以上です。

 20年分の所得を、飲まず食わず買わずで、全部つぎ込む価格です。つまり、普通の所得では支払えない価格です。なぜそうした価格があるのか。80年代にはなかった異常な価格が、なぜあるのか。

 平均所得600万円の日本に置き換えて言えば、100平米の住宅が1億2000万円~1億5000万円であることに相当します。買えば、破産する価格です。

 スペインの住宅価格が正当なのかどうか。スペインだけではない。英国、フランスもスペインほどの所得倍率でなくても、似ています。

 わが国の不動産価格は、今、合理的な地代で説明ができるレベルに下がっています。

 ところが、わが国以外の世界では、インド・中国・西欧・アジア(朝青龍のモンゴルですら)、そして15年も不動産が上がり続けている米国を含み、不動産と株価が高い。

 どう考えるべきか。90年代以降の世界的な不動産と株のバブルは、なぜ起こっているのか、どう向かうか、これが本稿のテーマです。

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