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3.分水嶺は2000年だった
2000年から、世帯の高齢化と平均賃金の低下のため貯蓄率が低下した。家計の合計資金収支はマイナスになり始めます。1400兆円をピークに、個人金融資産が増えなくなってきた。2000年6月は、家計の資金収支が赤字になるという日本の金融史の分水嶺でした。記憶しておくべきことです。
世帯の貯蓄が増え余るなら時期なら、企業か政府がその貯蓄をつかわねば、有効需要(ケインズ用語)が不足し、経済は縮小します。しかし今はもう、そんな時期ではない。世帯の資金収支は赤字がゼロです。政府が赤字国債で使う余裕はないのです。
(注)「住宅ローン」の返済が貯蓄とされているので、家計貯蓄率は低下していてもマイナスではありません。しかし資金収支はマイナスかほぼゼロです。
(1)4900万の家計部門の資金収支が、マイナスかゼロ。家計の金融資産は増えない。
(2)政府部門は、年間で資金が60兆円足りない。
(3)250万社の民間企業部門は、今は、借金返済で資金収支が黒字ですが、いずれまた借りるようになります。
一体誰が、政府部門1年60兆円の赤字資金を貸すのか? これが、わが国経済が抱えるマクロ経済の最大の問題です。
60兆円は1億円の60万倍。100万円の6億倍です。
4.10年は遅すぎたマニフェスト
▼両党の共通目標
郵貯(残高211兆円)と簡保(基金119兆円)を、政府部門が使う公共投資から、民間に回すというのが、与党の民営化の主張です。
民主党の「郵貯の上限制限論」、現状の預け額上限1000万円を、まず700万円にし、08年には500万円にするという、急作りのマニフェストも、郵貯・簡保の資金を民間に回すという点で、与党案と変わりません。
これは「官から民へ」、「小さな政府」の総論と結びついて、多くの国民にも正義のように思われています。
いずれも、今の郵貯・簡保の、現在の資金固定と資金繰りを無視した「10年遅すぎた主張」です。10年前なら意味があった。今はもう意味がない。郵貯・簡保には、売却で国債市場に波乱を起こさないとすれば、使えるお金が残っていないからです。
前回で示したように、郵貯・簡保の合計330兆円は、すでに304兆円(92%)が、政府部門によって使われてしまっています。
郵貯・簡保の資産のうち、有価証券に含む国債が170兆円、地方債が16兆円で公債合計が186兆円。118兆円の預託金は財務省預けであり、財投での政府債務と見ることができます。合計で304兆円がすでに「使われてる」ことは前号で示しました。
郵貯・簡保の330兆円を、「民間に回す」という両党の主張は、何が「回せる豊富な資金」の根拠か、理解ができません。郵政公社の金庫に、現預金はわずかです。政府部門の「借用証(公債+預り証)」があるだけです。これを売らない限り、郵貯・簡保に資金はない。
5.増えなくなった世帯の金融資産
郵貯・簡保も、世帯の高齢化のため、2000年以降、減少期にはいっています。増える預金を民間に回すということに意味があったのは、世帯の金融資産が増えていた時期(80年代まで)です。今は、郵貯・簡保は国債や財投債を売らない限り、「民間に回す資金」はない。
郵貯・簡保の民営化論、官が使う資金を民間に回すというのは、「郵貯・簡保が増えていた時代には有効だった遅れて来た主張」です。郵政公社は、公債を売らねば、資金繰りが困難になる状態にあります。
▼問題の金融市場
国債・財投債の、最大の安定した引き受け手だった郵貯・簡保が、これらを売りに出せば、国債価格が下がり、国債市場で決まる「金利」は急上昇します。
金利の上昇は、国債の引き受け難を生むと同時に、民間金融機関(総資金量500兆円)が持つ200兆円の国債を下落させ、90年代末のように、再び「債務超過」に陥れます。
郵政公社も国債下落で「自己資本」の6兆円を飛ばします。これらは、新たな国民負担になるでしょう。
日本の国債の特徴は、
・世帯や海外はわずかしか持たず、
・郵貯・簡保・銀行・生保の金融機関が持つという構造です。
財務省は、金融の支配力によって、低利の国債を買わせてきました。金融機関が、低利国債にリスクを感じる感性があれば、野放図に国が借金をすることはできなかった。半ば割り当てのように、郵貯・簡保は言うまでもなく、民間金融機関も、「ノンリスク資産」として国債を引き受けてきました。
▼金融機関にとって、今後最大のリスク資産になる国債
金利上昇による国債価格の下落は、再び、信用危機を生みます。90年代の信用危機は、民間企業の不良債権によるものでした。金利上昇があれば、今度は「国債」がリスクを生んで、ゼロ金利時代の債券として、価格が下落します。
▼常識であるが
与党と民主党に、「国債の持ち手と市場を考慮した、まともな論と政策」を望みます。申し上げていることは、金融市場の「常識」です。何ら、特別なことではない。使っているのは、以下の公表資料です。
(1)財務省『国家財政を考える』(05年3月公表)
(2)郵政公社『貸借対照表』(05年3月期)
両方(約70ページ)の数字を読めば、誰でも分かるくらい簡単なことです。
この連載のバックナンバー
- 10年遅すぎた郵貯・簡保の民営化 (2005/09/07)
- 自民党も民主党も、マニフェストは穴だらけ! (2005/09/02)

