郵政民営化解散の本質を問う!

7.郵貯・簡保資金は民間では使えない

 小泉首相と竹中大臣が言う「郵貯・簡保の巨額資金を、国には使わせない、民間に回す」というのは、ここまで考えれば、架空に近い政策目標になります。 

 唯一の方法は、郵貯・簡保が売った国債を、横流しで日銀が引き受けることですが、
(1)この策は、円の通貨信用を下落させ、
(2)円安と同時に、金利高騰を招くことになります。 結果は同じことになります。

 郵貯・簡保の資金は、国民が貯めた預金という信用の裏づけをもっています。「日銀信用」には、資金の根拠はない。「マネー政策での自己規律」だけが日銀信用です。

 以上のような、ギリギリにまで来ている国債需給と金融市場を考慮に入れたとき「郵政民営化」はどんな意味をもつことになるのか?

▼郵政民営化の意味

 現在の郵政公社の職員を、国家公務員から民間社員にし、郵政事業を利益をベースに経営を行なう会社にするということだけです。

 乗用車の普及で赤字を拡大した国鉄の民営化(27兆円の借金を国鉄清算事業団に渡し、現JRとして企業再生)に似ています。国鉄にとっての自動車に当たるのが、現在の郵便にとってのインターネットです。

 財務省は、郵貯・簡保という政府機関の安定した国債の引き受け手を失います。従って国債の発行額について、慎重な姿勢を要求されます。

 これが政府予算の、いくらかの抑制につながるとすれば、郵貯・簡保の民営化の効果と言えるでしょう。

 国債や地方債を売って郵貯・簡保の資金を民間に回す(融資する)のは、お茶を濁すくらいしかできない。民主党が言う銀行業の圧迫にはなりません。

 以上のような事情を考慮に入れた上で、郵政の民営化政策について判断をすべきでしょう。

 政権選択は、国民の手にゆだねられました。

 反対派が、大きな新党を作る可能性はないと見ます。自民公認を受けない人は、多くが無所属で戦います。理由は「皆が選挙後の自民復帰」を願っているからです。「小泉構造改革」はもう有効なキャッチフレーズにはならないでしょう。しかし国政の歴史上ほぼ初めて、首相と与党の選択を、国民が総選挙で行なうという意味はあります。

 小泉首相の功績は、族議員と敵対し、族議員が構成していた自民の派閥を無力にしたことです。構造改革とは、政界の構造改革の意味でした。

8.金利高騰の臨界点が近い

 借金は、返済せねばどんどん増えます。累積赤字の先延ばしは、負債をもっと大きくします。政策論では、政府の赤字と「1週間で1兆円以上の速度(年50兆円~60兆円)」で累増する公債を、今後、どうするかでなければならない。

 多額の国債増発を、郵政公社や日銀で引き受けて、こそこそやるようでは、一層危険が増します。巷(ちまた)の「国家財政破綻論」に対し、そうではないという論拠と数字を全部挙げ、まともに答える政府でなければならない。次期政権は、この問題に、直面を迫られるからです。

 日銀だけが国債をもっと大量に買うしか方法がない時期が、近づいています。

 政府への貸付に304兆円が固定された郵貯・簡保の資金は、枯渇しつつあるからです。1400兆円の個人金融資産は、今、その80%が、国家への貸付になりつつあります。個人金融資産の90%(1260兆円)が、国家・地方への貸付になったときを臨界点に、金利が暴走する可能性が高いと思えます。個人金融資産が1400兆円あるから、日本の政府赤字は大丈夫とは、もう言えないのです。

 猶予(ゆうよ)分はあと100兆円~150兆円、期間にすれば2年から3年でしょう。遅くとも4年(200兆円)。次期政権は、このことに、まともに取り組まねばならない。

【後記】
 TVで、議員討論を聞いているとむなしくなります。議員失業を恐れる人、そして個人的な怨念や自分の面子(めんつ)を主張する人にしか見えませんね。

 一般会計と特別会計を含む国家財政の総体について、具体数字を全部挙げ、論理的に政策論を深める人が出ないものなのでしょうか?

吉田 繁治(よしだ・しげはる) 吉田 繁治(よしだ・しげはる)

Systems Research Ltd.代表取締役・チーフコンサルタント

●業務領域
<小売り・流通テクノロジー>
マーチャンダイジング/ロジスティ/SCM/CRM

<経営戦略立案>
チェーンストア戦略/サプライチェーン戦略/経営戦略

<情報システム>
小売り・流通業アプリケーション/サプライチェーンシステム/e-Commerce/e-Logistics

●経歴
東京大学卒 専攻はフランス哲学

・家具インテリア業界のボランタリーチェーン本部であるジェフサセントルのブレーン
・(旧)通産省情報処理振興審議会専門委員
・小売り・流通業各社ブレーン等
・1987年より、ITと経営のコンサルタント

問い合わせはe-Mailで : yoshida@cool-knowledge.com

ホームページ「クール・ナレッジ」 http://www.cool-knowledge.com/index.html

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