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4.問題の焦点
郵政問題の表面上の政治的な争点は、窓口事業としては現在赤字の郵便局(1万8千局:損益数値は未公開)を、どうするかということです。赤字分を郵貯と簡保の黒字で補填しながら、他の地域サービス事業を行なって、順次、黒字化を図って行くという方策に落ち着くでしょう。
もっと大切な焦点は、
・過去は旧大蔵省の財投(公共投資)と公債購入(国債・地方債)、
・現在は、(同じことですが)財投債の購入と公債の購入に当ててきた郵貯・簡保の資金を、今後どう使うかという点です。
明らかにするために「郵政公社」の資産・負債内容を、整理しながら見ます。貸借対照表という数値での把握が論をはっきりさせます。内容を見れば、世界一巨大な金融機関と言うより、公債の購入と国家への貸付機関が郵政公社です。
金融機関としての業務は、資金の運用では、無いに等しい。運用では、国家への貸付しか行なっていないからです。
▼郵政公社の貸借対照表は、整理すれば単純な内容になる
<参考URL> 「日本郵政公社財務諸表」 http://www.japanpost.jp/top/disclosure/pdf/financial16.pdf
金額は巨大であっても、郵政公社の負債(資金の源泉)と、持っている資産の中身は単純です。以下の3行でまとまります。
郵貯と簡保として、330兆円の国民からの借り入れがあり、
・有価証券217兆円(国債170兆円、地方債16兆円、社債26兆円、海外証券5兆円)の購入と、
・財務省への預託金118兆円で、運用しています。
資産の有価証券のうち、[国債170兆円+地方債16兆円]であり、公債の合計は186兆円です。
財務省への預託金(預けたお金)118兆円も、実質的には国債(=国家への貸付)と同じです。郵政公社が預託金を引き出せば、財務省は、国債発行で補うしか方法がないからです。
両者を合計すれば、304兆円が「国債」の保有であると見ることができます。
以上をまとめれば、
・「国民から預かった郵貯・簡保の330兆円」は、
・そのほぼ全部が「304兆円の国債」になっているということができます。
単純化すれば以下です。
[国民の金融資産 330兆円]
↓
[郵貯・簡保の資金 330兆円]
↓
[国家への貸付 304兆円(国債+公債+預託金)]
330兆円の国民の金融資産を、ほぼそっくり、国家に貸付しているのが郵政公社です。
▼郵貯・簡保の機能は「国債買い」だった
「安定的に国債・地方債を買う郵貯・簡保」があったからこそ、国や地方は800兆円余の公債を発行する(=借金をする)ことができたと言うことができます。
公共投資や特殊法人への貸付に回った「財投(約350兆円)」も同じです。郵貯・簡保資金は、財投の原資でした。
小泉首相の持論である「郵貯・簡保の民営化によって、公債買いや特殊法人への財投を減らす」という政策は、郵貯・簡保が増えている時期、つまり90年代までは、まだ、意味がありました。郵貯・簡保が減少に入り、しかも十分すぎる304兆円も国家が使ってしまった後(2000年以降)は、意味が薄くなっています。郵貯・簡保の資金を利用するには、国家から回収しなければならないからです。
ところが国家は、一般会計で40兆円規模の赤字予算です。過去は黒字だった厚生年金(特別会計に属します)も、年5兆円の赤字です。郵貯・簡保が資金を回収すれば、国家は返済原資を得るために、ますます国債を増やして発行しなければならない。
質問に答える竹中担当相
(写真提供:時事通信。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うこと は禁じられています)
【民営化案】
政府案の「民営化」は、国が使っている郵貯・簡保の304兆円の資金を、幾ばくか「民間」に回すということです。民主党案の郵貯・簡保の縮小案もこの点で類似しています。郵貯・簡保資金を、民間に回すことは、両党に共通の政策目的になっていると言っていいのです。
小泉首相も竹中郵政担当大臣も「郵貯・簡保の資金を民間に回すのが、民営化の目的である」と明言しています。
実際に、これが可能かを検討します。可能なことを検討することがなければ、政策に意味はないからです。
この連載のバックナンバー
- 10年遅すぎた郵貯・簡保の民営化 (2005/09/07)
- 自民党も民主党も、マニフェストは穴だらけ! (2005/09/02)

