郵政民営化解散の本質を問う!

1.予想していたことと実際の展開のズレ

 最初に、解散・総選挙という結果を見る前の予想を示します。結論を言えば、私の予想は、はずれました。

 8月5日以前は、以下のように予想していました。

(1)直前の05年7月都議選に現れたように、総選挙を行なえば、自民が負ける可能性が高い。自民は、ますます公明党依存になる。

(2)03年の衆院選挙のときは、小泉人気が高く、結果は自民237人の当選(過半数は240名)、民主は177名だった。今、小泉人気は03年より落ちている。

(3)首相の解散発言は、当落すれすれの、40%くらいの議員へのブラフ(はったり的な脅し)である。

(4)自民または民主が政権を構成するとき、キャスティング・ボードを握り、800万の固定票を持つ公明党は、総選挙に反対している。公明党の協力次第で、当落が決まる議員が多い。

(5)参議院での民営化案の否決は、予想される。

(6)政府は政策的な妥協を図って、再審議に向かう。

 予想がはずれた原因は、「総選挙に持ち込めば勝てる。原案通りに民営化ができる」と小泉首相が「心底から考えている」とは思っていなかったからです。「現政権の『構造改革路線』に対し、国民の支持は厚い」という小泉首相の「信念」を、見誤っていました。

▼派生的な問題

 郵政民営化は「特定郵便局の維持」か、そうでないかという「派生的こと」が主な問題として取り上げられるようになっています。理由は、郵貯・簡保330兆円の資金運用は専門的になって、説明が難しくなるからでしょう。

 全国2万4千郵便局(2000世帯当たり1郵便局:比較コンビニ4万店)のうち、3分の2の1万8千局は赤字です。赤字分は、郵貯・簡保の黒字で補填されています。

 郵便を単独で行なえば、過疎地を含むネットワークの維持は、今のままの事業内容では難しくなります。インターネットとeメールで、今の郵便は、衰退産業になっているからです。

 郵便制度が発足(1871年)した明治以来の、世襲制に近い「特定郵便局」で構成される特定郵便局会は、旧橋本派(田中角栄派を継承)と自民党の強力な支持基盤でした。特定郵便局は、1万9千局です。

 民営化反対のリーダーである前衆議院議長、綿貫民輔氏(旧橋本派)は、特定郵便局会の会長です。

 本稿では、特定郵便局の維持ということからではなく、郵政民営化の政府案全体を見ます。中身が分かりにくいためか、内容が知られていません。民主党は政府案に反対です。しかし「郵政の正常化」を図るべきだと言いつつ、何を反対しているのか、はっきりしません。この2つを、単純化しながら明らかにして行きます。

2.政府案

 郵政事業は、政府案では、(1)郵貯、(2)簡保(生命保険)、(3)郵便、(4)窓口業務の機能に分けることができます。

▼4事業の株式会社化と、持ち株会社

 政府案は、4機能を独立させ、株式会社にする案です。(株式会社化を「民営化」と呼んでいます。)4つの株式会社の上に、4事業の「持ち株会社」を作る。国(政府)は、持ち株会社の三分の1以上の株をもつ。

(注)現在は、4事業を行なっている郵政公社です。

▼最終的な民営化イメージ

 以下は、4つの会社の事業内容です。

(1)窓口業務会社

 各地の郵便局は、多くが、窓口業務会社になります。

・郵便、郵貯、簡保の窓口業務を行なう。
・合わせて年金、恩給、公共料金の受払い業務も受託する。
・コンビニ風小売、旅行代理店、チケット販売、介護サービス等も行なう。

(2)郵便事業会社

・郵便について、窓口業務以外の、集配事業を行なう。郵便料金については、政府が関与を続ける。
・物流業(宅配等)を行なう。

(3)郵便貯金会社

・民間金融機関と同様の、預金・貸出・債券売買の業務を行なう。窓口業務は、窓口会社に委託する。
・郵貯の支払いについての政府保証は廃止し、預金保険機構に加入する。

 預金量210兆円の「銀行」が誕生することになります。

(4)郵便保険(簡保)会社

・民間生命保険会社と同じ業務を行なう。窓口業務は、窓口会社に委託する。

 保険基金120兆円の「生保」が生まれることになります。

 以上が政府案の骨子です。

 この案に強く反対しているのは、窓口業務会社に属することになる郵便局(特定郵便局)です。

反対の理由は、

(1)身分保証のある国家公務員の地位を失うこと、
(2)過疎地の局は赤字になる可能性が高く閉鎖されるのではないかという恐れです。

 今回の自民党の反乱は、郵政族議員が中核であり、それに与党内の反小泉勢力が加わっています。首相の政治手法が、党および大臣人事と政策において、「独裁的」であるということが理由です。

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