盗んだ品を投げ捨てて逃げた泥棒

手口はサムターン回しか?

 上原さん宅がある13階には三つの住戸が並んでいる。このうち、上原さん宅は真ん中。実は、このフロアでは5年前にも泥棒の被害があった。

 上原さん宅の玄関ドアには、今でも外から穴を開けようとした跡がくっきり残っている。5年前、この傷を発見した上原さんは「泥棒では?」と警察に通報した。駆け付けた警察官は、両隣の住戸も確認した。すると、左隣のお宅がサムターン回しで錠を開けられていた。被害に遭ったのはお隣のお宅で、上原さん宅には被害はなかった。

玄関ドアの外から穴を開けようとした跡が、錠の真横に小さなへこみとして、いまでもくっきり残っている

玄関ドアの外から穴を開けようとした跡が、錠の真横に小さなへこみとして、いまでもくっきり残っている

 左隣のお宅のドアに穴が開いていることを考え合わせると、同じ犯人が、同じ手口で上原さん宅に侵入しようとしたのだろう。だが、犯人は途中で、なぜか作業を中断したようだ。だれかが帰って来る様子を察知したのかもしれない。同行した専門家、セコムIS研究所の甘利康文氏は、「2軒目ということを考えると、穴を開けるのに用いたドリルの刃がなまってしまったのかもしれません」と指摘する。

 侵入未遂の後、上原さんのお宅では早速、サムターン回し対策を施す。対策に用いたのは、ペットボトル。これを底付近でカットし、底面を一部くり抜いてサムターンの周囲に両面テープで取り付けた。対策の方法は管理人から教わった。

現在のサムターン回し対策。当初はペットボトルを使っていたが、一昨年の事件があってからさらに強化した。現在はサムターンを、ほぼ同じ大きさの金属製の筒で覆い、さらにその周囲を、よく総菜類を盛るのに用いる透明樹脂製の容器でガードした。ガードが突破されたとしても、サムターンを覆う筒があるので、工具で操作しようにも滑って回しにくい

現在のサムターン回し対策。当初はペットボトルを使っていたが、一昨年の事件があってからさらに強化した。現在はサムターンを、ほぼ同じ大きさの金属製の筒で覆い、さらにその周囲を、よく総菜類を盛るのに用いる透明樹脂製の容器でガードした。ガードが突破されたとしても、サムターンを覆う筒があるので、工具で操作しようにも滑って回しにくい

 サムターン回しとは、玄関ドアの錠近くに開けた穴などに作業用の工具を差し入れて、ドアの外から内側のサムターンを操作して錠を開けてしまう手口だ。サムターンの周囲を何かでガードしておけば、工具は近づけにくくなる。

 一昨年の犯行では、ペットボトルでつくったサムターンカバーが玄関たたき部分に落ちていたことから、サムターン回しが手口だったのではないか、という。ただ、ドアに穴は空いていない。では工具はどこから入れたのだろうか。「警察では、閉まったドアのすき間から作業用の工具を差し入れて、サムターンを回したのではないか、と言っていました」と上原さんは説明する。

 それにしても、なぜ上原さんの住むマンションの13階では、2回も被害に遭ったのだろうか。同じマンションでも、ほかの階でこうした例はない。実は、このフロアならではの弱点があった。それは3世帯が、共働き世帯であったり、単身者の世帯であったりで、平日の朝から夜まで人気がほとんどないことだ。ほかの階では夕方になればどこかのお宅で照明がつく。ところが13階は夜遅くにならないとつかない。外から、部屋の照明がついていないことを確認した上で犯行に及べば、見つかるリスクは極めて小さい。

 マンションの入り口で防ぐことはできなかったのか。不審者の侵入を防ぐため、このマンションのエントランスはオートロック式の自動ドアになっている。だが、それでも完璧ではない。事実、2回とも泥棒はこのドアをすり抜けている。その気になれば、だれでもエントランスに侵入することはできるのだ。

 

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