すぐそこにある危機

第36回
野生復帰に成功したトキ
血が濃く、数が増え病気まん延の恐れも

文/藤田 香
2008年12月15日

写真/トキモニタリングボランティア提供

 11月上旬、新潟県関川村の休耕田でトキが目撃された(写真)。このトキは9月末に佐渡島で放鳥されて野生復帰した1羽で、日本海を渡って100kmも旅してきた。飼育下で生まれ訓練を施し、野生に帰したトキは「20~30kmは飛ぶとされていたが、100kmは想定外だった」と佐渡トキ保護センターは驚く。2005年に野生復帰に成功したコウノトリも、兵庫県豊岡市から長崎県五島列島まで1300km飛び、野生の名残を感じさせた。

 絶滅した鳥を復活させるプロジェクトは順調に進んでいる。だが問題はこれから。野外に放された鳥が餌を確保できる自然環境が整っているかどうかだ。と同時に、飼育下で数が増え過ぎるという問題も起きている。トキの場合、野生復帰は10羽だが、飼育下に112羽もいる。ペアは1度に3~4個の卵を産むため 2010年には施設が満杯になる。しかも、2系統の血筋しかない。

 多様性が低く1カ所に過密して生息すれば、鳥インフルエンザで一気に死ぬ危険性もある。そこで環境省は、ペアを石川県や島根県で分散飼育する対策を検討中だ。一方のコウノトリは既に施設の定員100羽に達し、卵をかえさない対策をとる。真の野生復帰は、華々しい放鳥事業で終わりではない。

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。