すぐそこにある危機

第12回
溶けると黒い粒が出現
中国の大気汚染を敏感にキャッチする樹氷

文/藤田 香(日経エコロジー編集委員)
2006年12月15日

 冬の蔵王の名物は純白に輝く樹氷。しかし一見白い樹氷も、溶かすと黒い粒が沈殿し、汚染が深刻化していることが山形大学の柳澤文孝教授らの調査でわかった。柳澤教授が1991年から毎冬20回樹氷の氷を採取してpHを測ったところ、95年の5.3から2005年は4.5と酸性化が進んでいることが判明。酸性化の原因は硫酸だが、それがどこから来たかは硫酸に含まれるイオウの同位体比でわかる。蔵王の樹氷の同位体比は約5‰(1‰=0.1%)と日本起源の値(2‰以下)より高い。「北京や山西省など中国北部で使われている石炭の値と一致するため、中国から季節風で運ばれてきた」と柳澤教授はみる。

 同教授らは雨やエアロゾル(大気中の微粒子)でも同様の調査を実施。例えば鶴岡市で採取したエアロゾルのイオウ同位体比は、冬から春にかけて高く、夏に低いという変動が見られた。「大気汚染物質が冬には中国から直接、春には黄砂に付着して飛来している」

 樹氷は温暖化の影響も色濃く映す。「1970年代には12月から翌年4月半ばまで出現したが、最近は1月後半から2月末がせいぜい。標高も70年代の1450mから最近は100m近く上昇し、約1℃の気温上昇を示している」と柳澤教授。蔵王の名物も、ひと月しか楽しめない絶滅危惧種になりつつある。

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