すぐそこにある危機

第2回
サクラに忍び寄るキノコ
幹の中を腐らせ全国に浸透中

文/藤田 香(日経エコロジー編集委員)
2006年4月21日

 サクラ前線が北上し、各地の人々が薄ピンクの花をめでている。しかし、一見華麗に咲くサクラの木でも、幹の中は腐っている場合がある。犯人はキノコだ。コフキタケ(写真下)やベッコウタケなどのキノコが今、全国のサクラに広がっている。

写真/小林 明

 各地に育つサクラの多くは、野生の生物ではなく、明治期に接ぎ木で増やしたクローンたち。遺伝的に同質なため、格好の環境指標になると同時に、病虫害には一気に侵されやすい。有名な指標の1つが開花時期。気象庁によれば、1953 ~2004 年の約50 年間に全国82 カ所で観測された開花時期は平均で4.2 日早まり、2~4月の平均気温との相関関係が見られた。

 最近キノコが進出してきたのは、全国のソメイヨシノが戦後の復興期に植えられ、そろって50 ~60 歳の老木になったことにも関係している。老木は傷や剪定跡から担子菌の胞子が入りやすく、発芽してキノコになる。「担子菌の生育は、温度、湿度、空気、栄養の4条件で決まる。ヒートアイランド現象で最低気温が高くなり、担子菌が育ちやすい日が増えたこともキノコ繁殖を促進している」と、日本樹木医会の小林明理事は指摘する。

 加齢に気温上昇、キノコの侵入、見物客のマナー。春の主役は人知れず環境ストレスと闘っている。

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