「天下り」規制も先送りか
早期勧奨退職というのは、同期から次官が出そうになると、残りの同期生たちをいっせいに退職させる慣行である。再就職先をその省の官房が探すことになる。官房の課長たちの重要な仕事がこれで、ここをしっかりやっておかないと、今度は自分たちが困ることになる。
親しい高級官僚の1人からこういう質問を真顔で受けた。「新聞社では編集委員とか論説委員とかナントカ委員という人たちがいますよね。あの人たちはモラール(士気)やモチベーション(やる気)を維持できるのでしょうかねえ」。
つまり、ラインから外されたら働く意欲を失うのではないか、というのである。これは自分自身の経験からいっても、意外な質問であった。「新聞社というのは原稿を書ける場所にいるのが最高だと思う者の集まり。一般的な出世願望はない。自分の体験でも“長”がつくポストより、ナントカ委員のほうがよかった」と答えておいた。
公務員制度見直しの中で、スタッフ職の充実を図ろうとしているのは、そうした背景がある。ラインから外れても給料レベルは維持したまま、専門的なスタッフとして働く場をつくろうというわけだが、各省の現場では相当に苦労しているようだ。だいたいが、次官-局長-課長-課長補佐-係長といったラインの指揮系統で動いている官僚システムに、高級スタッフ職を持ち込むという発想がそもそもないのである。
「天下り」規制が必要であることは当然であるにしても、これを根絶し、そのうえ省庁横断的な人材活用センターを作ろうというのだから、これには相当のパワーが必要だ。その実態を知らないまま、あるいは、だれも諫言しようとはしないまま、安倍前首相は危険な領域に入り込んでしまったのであった。
福田首相はそうした実態を百も承知している。公務員制度改革にはきわめて慎重だ。すべて出直し、先送りになる公算が強い。
そのほか、集団的自衛権の見直し、日本版NSC(国家安全保障会議)の創設、一連の教育改革など、安倍政治の置き土産のほとんどに、福田首相は関心を示していない。そのことの是非はともあれ、福田政権発足で霞が関や自民党内に安心感、安定感が広がりつつあるのは、こうした福田首相の基本姿勢と無縁ではない。
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