今後の行動が読めない小沢氏の怖さ
小沢氏は長い政治家人生で、国会の委員会質問に立ったことがほとんどない。政策通の理念派と見られる半面、「政策よりも政局」タイプである。政局を大転換させようというときには、宮沢政権崩壊、細川8党派連立政権の樹立、小選挙区制導入の荒業などに見られるように、ダイナミックにポーンと飛んでみせる。これを「ワープ」と呼んだ人がいた。宇宙空間をひとっ飛びするときに宇宙戦艦ヤマトが使う航法である。次の瞬間にはまったく違う次元にすっと立っているといったイメージだ。
これが周辺に恐怖感を与えている。常人にはとっさには理解しがたいダイナミズムがあるものだから、「こちらの対応をひとつ間違えると、何をするか分からない」という不気味さがつきまとうのだ。
一昨年の大連立騒動で、いったんは代表の辞任を表明、周辺の必死の説得でこれを引っ込めたが、あのとき、民主党の大方の幹部に去来したのは、「党を割って出ていってしまうのではないか」という思いであった。民主党は自民党から旧社会党までの出身者で構成された寄せ集め集団である。小選挙区選挙を戦うための選挙互助システムという側面からいつまでたっても脱皮できない。
小沢氏が「重石」の役割を演じて、なんとか結束力が維持されているというのが実情だ。その小沢氏に対して、いま、党内では「新進党瓦解」のときの悪夢が頭をよぎっているようだ。小沢氏は新進党が分裂した理由について、「公明党が独自にやらせてくれと言ったことが大きい」などと説明していたが、「壊し屋」の異名はこれで確定的となった。
民主党の多くの議員たちに、そのときの衝撃が改めて重くのしかかっている。「代表辞任を迫ったりすれば、手勢を引き連れて出ていってしまうのではないか」というのだ。とかく小沢氏は面倒くさがり屋で、常に説明不足だ。「そんなことぐらい、自分で判断しろよ」と突き放す。その出方がなんとも読めないことが、こういう重大な局面で民主党幹部たちの手足を縛ることになる。小沢氏と「刺し違え」て、辞任を求めるといった迫力も出てこない。
かつて小沢氏から「政治を動かすには50人いれば十分だ」と聞いた言葉が頭から離れない。この発想から、新生党や自由党の設立、自民党との「自自連立」、民主党との「民由合併」といった政治行動が生まれたのであった。
小沢氏を中心とする民主党内の「派閥」一心会のメンバーはざっと50人だ。この50人を引き連れて民主党を割って出るといった行動は、いくらなんでも想定できない、というのが党内の大勢だ。だが、「もしや」という不安がついてまわる。この局面で政権交代はとてもではないが無理だと判断したら、小沢氏のことだから、民主党代表にしがみついている理由はなくなるのである。
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