第128回
こんな首相演説は初めてだ
政治アナリスト 花岡 信昭氏
2008年10月2日
なにやら、このところの政治は「サプライズ」の連続である。福田康夫氏の首相退陣に始まって、麻生太郎新政権がばたばたと生まれ、小泉純一郎元首相が引退を表明し、中山成彬氏が「失言」で国土交通相をわずか5日で辞任する。もっとも、政界は来るべき衆院解散、総選挙に向けてまっしぐらに突っ走っているから、新幹線の車窓から見る景色のように、あっという間に通り過ぎる。
だから、いちいち驚いてなどいられないのだが、麻生首相の所信表明演説にはうならされた。新聞社在勤時代を含め、政治ウオッチャーを30年ばかりやってきているから、施政方針、所信表明など首相の演説は(厳密に勘定したわけではないが)100本ぐらい扱ってきた。本会議場で聞いたり、草稿を読んだり、テレビで見たりと形態はさまざまだが、最後まで「飽きなかった」のは初めての経験である。
政治には「言葉」が最も重要であると多くの人が指摘しているものの、国会から「名演説」が消えたといわれて久しい。そういう実態のなかで、今回の麻生首相の所信表明演説は日本政治に演説を復活させ、ディベートを根付かせるうえでも貴重である。
「かしこくも、御名御璽をいただき、第92代内閣総理大臣に就任いたしました」
「118年になんなんとする、憲政の大河があります」
「日本人の、苦難と幸福、哀しみと喜び、あたかもあざなえる縄のごとき、連綿たる集積があるのであります」
「この言葉よ、届けと念じます」
「日本は、強くあらねばなりません」
「日本は、明るくなければなりません」
冒頭部分からいくつか引用してみたが、これは役人の発想では出てこない表現である。そして、この「就任にあたって」の次に「国会運営」に言及、民主党に対して、「政局を第一義とし、国民の生活を第二義、第三義とする姿勢に終始したのであります」と激しく攻撃し、対決姿勢を鮮明にした。
ほかの野党はまったく出てこない。そこには、「自民 vs.民主」の2大政党時代を踏まえ、「麻生自民」と「小沢民主」が真っ向からぶつかる「政権選択選挙」をいや応なく国民に意識させようというねらいが込められていたと思える。
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