噂が噂を呼ぶブログ社会
問題となったのは、トリノ五輪の中継をめぐるNHK「偏向」批判である。女子フィギュアで荒川静香選手が優勝、日本時間の2月24日午前7時10分ごろから表彰式が行われた(早朝にもかかわらず、この時点での視聴率は43%に達した)。メダルが授与され、日の丸掲揚、君が代斉唱と続き、荒川が君が代を歌うシーンは多くの日本人に感動を与えた。表彰式が終わって、荒川ら3人が揃ってウイニングランを行った。
リンクを1周して荒川が観客席に近寄り、日の丸を手にしたと思われたとき、NHKの中継画像はハイライトシーンのビデオに切り替わってしまった。15分ほど、そうしたビデオが流されたあと、荒川選手のインタビューが流された。
これが当日の中継の模様だ。その後、ネット上に荒川選手が日の丸を身にまとって華麗にウイニングランをしているカラー写真が大量に出てきた。各メディアが写真特集を掲載したのである。ここでブログの世界は大騒ぎになった。「NHKは荒川が日の丸を手に取った瞬間に画面を切り替えて、国旗を映さないようにした。明白な偏向だ」という主張が飛び交ったのだ。
NHKには抗議電話が殺到、当初の対応がもたついたこともあって、「受信料不払いの新たな理由ができた」とするブログまで出てきた。NHKに対する偏向批判はいまに始まったことではなく、筆者もたびたびやってきた。だが、一般紙のすべてが荒川の日の丸ウイニングランを記事でも写真でも扱ってはいない。日の丸を「隠した」NHKを非難するのなら、新聞各紙も同罪ではないか。
メディアの世界に長くいるから、NHKには友人知己も多い。「いったいこの騒ぎは何なのか」と聞いてみると、「国際映像の制約による。NHKが故意に切り替えたのではないのだが、どう説明しても分かってもらえない」と言う。
トリノ五輪ではTOBOという国際組織が共通映像を制作し、これを各国の放送局が受け、それぞれのアナウンサーや解説者の音声を乗せて放送している。日本の場合は、NHKと民放各社がJC(ジャパン・コンソーシアム)という統一組織を編成、女子フィギュアはNHKが中継を受け持っていた。
NHKの担当者が「日の丸が映る。まずいから切り替えろ」とやったのではないというのである。そこで、「国際映像の制約によるものだ」と、筆者がささやかに配信しているメルマガ、ブログに書いたら、すさまじい反応が来た。「NHKの言うことを信用するのか」「NHKからいくらもらったのか」「問われているのは、おまえの人間性だ」「筆を折りなさい」などと、言いたい放題である。ブログの世界は相互乗り入れが激しいから、瞬時にして広まるのだ。
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