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医療社会学からみたリスク

第19回
いびきと居眠りは病気?

神経内科医・医療社会学者 美馬 達哉氏
2006年10月10日

“新幹線運転士居眠り”ショック

 眠ることに関連した健康や病気の問題といえば、これまでは夜に眠れないという状態つまり不眠症だった。

 「だった」と過去形にした理由は、逆に昼間に眠気が襲うという状態が、最近マスメディアなどで注目されているからだ。そうした関心を反映して、総合病院のなかには、睡眠外来、いびき外来、睡眠時無呼吸外来などの専門外来を設けて、昼間に眠気のある人や夜間に眠りの浅い人の健康相談を受け付けているところも増え始めている。

 目を覚ましていなければならない昼間に眠気を引き起こす病気のなかでの代表的なものが「睡眠時無呼吸症候群」(SAS:Sleep Apnea Syndrome)である。

 このSASと略される病気が日本のマスメディアなどで大きく取り上げられるきっかけとなったのは、2003年2月26日に起きた山陽新幹線での居眠り運転事故だった。運転士が眠ったままに新幹線が走行したが、自動列車停止装置(ATC)の作動のおかげで、岡山駅の停止位置の手前で停車したという事故だ。

 ただし、事故といっても幸いにも人身事故や大事故ではなく、日本国内では大騒ぎになったものの、海外メディアでは「この程度のことが事故として騒がれるとは、なんと強迫的に几帳面な民族性だ」という反応がむしろ典型的だった。

 運転士は職場の健康診断では特に問題なかったものの、事故後に受けた医学的な精密検査によってSASと診断された。

 SASという病気の一つの症状として居眠りがあったかもしれないということから、SASが単なる一つの病気というよりも、交通機関での事故原因として、社会問題のように扱われるはめになったわけである。

 それを受けて、同年3月には、厚生労働省ではなく、国土交通省が中心となって、SASによる居眠り運転自動車事故への注意を喚起するパンフレットを作成し、医療機関などに配布した。一方、自動車運転にかかわる事業者に対しては、雇用されている運転者がSASの診断と治療を受けるように指導することが求められたのである。

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