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医療社会学からみたリスク

第17回
なんと、入院してしまいました(2)

神経内科医・医療社会学者 美馬 達哉氏
2006年9月6日

バーコードな気分

 入院してみると、仕事柄、どうしても入院のお見舞いにやってきてくれる人も医療関係者が多くなってしまう。病室に閉じ込められている私が意外に元気でへばっていないのを確認し終わると、訪れた医療関係者のほとんどが少し悪戯っぽい目で私の手首を見つめて、同じ質問を口にする(残念ながら、社会学的な統計調査をするほど気力は回復していなかったが、かなりの確率であることは確かだ)。

 「入院して患者になって、商品みたいにバーコードを付けられている気分ってどう?」

 最近の病院では、入院患者の手首にはプラスチックで出来た取り外しのできない腕輪のような名札をはめて、そこに患者ID番号とバーコードを記載していることが多い。デパートやコンビニの商品の値札とよく似たようなものと思ってもらっていい。

 使い方は簡単で、看護師や医師のような医療者が点滴などの処置をする際に、ポータブルの光学式読み取り装置を使ってバーコード部分を「ピッ」とスキャンして、入院患者のIDと治療用の点滴ボトルが一致しているかどうかを確認するわけだ。

 1人ひとりの人間の注意力には限界があるので、医療過誤のリスクを避けるために、二重、三重のチェックが重要なことは当然だ。患者を取り違えて手術をしたという事件(第2回、医療過誤から身を守る「賢い患者」の真の意味)が問題になり始めたころから、いわゆるこのバーコード腕輪が普及し始めたようにも思う。

 たとえ、麻酔で本人の意識がなくなっていても、顔が手術準備で隠されていても、手首のバーコードをチェックすれば取り違えることはなくなるだろう。また、点滴の場合でも(主治医がカルテに間違った内容の指示を書いていれば別だが)、別人の点滴を間違って注射されることはなくなるだろう。

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