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医療社会学からみたリスク

医者が患者になったとき

 私のような場合、つまり医者が患者になったときには、この「地獄への道は善意で舗装されている」症候群になることはまずあり得ない。その理由は簡単で、医者は「最悪の患者」になるので、そもそも善意の対象になりにくいからだ。

 注射が下手だと文句を言い、痛みを伴う検査は露骨に嫌がって、すぐに退院をしたがる。かくいう私も、痛い検査が2回必要なところを1回に“まけて”もらったり、点滴が必要なところを内服薬にしてもらったり、わがままを言う「最悪の患者」だった(主治医には大感謝)。

 医療社会学では、「医者患者関係」とは、医者と患者という社会役割を相互に(意識しているかどうかは別にして)演じているゲームのようなものだと考える。そのなかで、医者役割のルールを熟知した医者が患者役割になってしまうと、なまじ医者役割のルールを知っているだけに、社会役割の演じ方が安定しなくなり、医療者も患者もやや当惑する結果となりやすいことになる。

 つまり、医療社会学から見れば、社会構造上の理由から「最悪の患者」であったわけで、私の人格が自己中心的だから「最悪の患者」になったわけではない。声を大にして言いたいところだが、誤解のないようにしてもらいたい。こういう大事なことを理解する一助となるだけでも、社会学は実に有用な学問であることを分かっていただけただろう。

 言い訳、もとい社会学的分析をしていると予想外に長くなった。治療をめぐるリスクで気づいたことは次回に取り上げることにしよう。

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