第16回
なんと、入院してしまいました(1)
神経内科医・医療社会学者 美馬 達哉氏
2006年8月22日
患者の側からみた臨床現場
8月にはいってすぐ、不摂生がたたったのか、急病にて10日ほど入院するという羽目になった。医療のリスクを皮肉るともみえる日ごろの態度がよくないためか(?)、まさに「医者の不養生」を地でいっていると、最初は家族や友人からもあまり同情してもらえない。
本人が病気になると、苦しんでいる患者ではなく、まるで病気を早期発見できなかったヤブ医者のように扱われてしまう──。これは想定外のリスクだ。次々に続く検査でへばっている姿を見て優しい言葉をかけてくれた妻も、最後には「これで患者の気持ちが分かるようになったでしょう」とのありがたい一言。
さて、病気や医療に関係する様々なリスクをこの連載コラムでは論じてきたが、自分の健康リスクが現実のものとなるとはとても驚いた。
今まで、ここでは、医療者つまりサービス提供側に近い立場から医療現場でのリスクを考えてみたり、社会学者つまり観察者の立場から、医療や病気に関わるリスクを語ったりしてきた。だが、今回は、この入院体験で気づいたこと、患者という受け手の立場からみた臨床現場のリスクを考えてみることにしよう。
とはいえ、入院することになった病院が、特に医療ミスのリスクが大きかったというわけではない。また、リスクが現実になりそうな“ヒヤリ・ハット”に遭遇して危なかったというわけでもない。適切な治療が素早く行われて無事に軽快退院したことについて、関係者には心から感謝している。
さて、患者という立場から見たリスクは、受診して入院し退院していくという時間的な流れにそって重点が移り変わっていく。当たり前のことだが、この“シナリオ”のどの段階にあるかによって、どんなリスクが問題化されやすいかは違ってくるのだ。
ここでは、診断に至るまでに潜むリスクと、診断がはっきりして治療(点滴や投薬、今回は私の場合では手術は不要だった)が行われる際のリスクの2つにおいて、印象に残ったことを書き留めておくことにしよう。
この連載のバックナンバー
- 代理母をめぐる応答責任(アカウンタビリティ) (2006/10/31)
- いびきと居眠りは病気? (2006/10/10)
- 抗うつ薬は何に効く? (2006/09/19)
- なんと、入院してしまいました(2) (2006/09/06)
- なんと、入院してしまいました(1) (2006/08/22)

