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第12回
長時間居座る“迷惑客”とトラブル発生
「長居をしてはいけないのか」
文/水野 孝彦(日経レストラン)、イラスト/蛭子 能収
2006年9月4日
○月×日 夕方
長居し過ぎで困ったお客
「おい! いつまで待たせるつもりだ」。ランチタイムに、席が空くのを待っていたお客の1人が怒り出した。スタッフの報告を受けて、駆け付けた店長のA君がなだめようとしたが、お客の怒りは収まらない。そのお客は、店内のテーブル席に座るある男性客に目をやって、こう指摘した。「食べ終わっている客が居座ってるから席が空かないんだ。何とかしてくれよ」。
指摘通り、そのテーブル席のお客は、食事を済ませた後も30分以上だろうか、随分長く、新聞や雑誌を読みながら、席に座っていた。A君は、テーブル席のお客にやんわりと席を空けてもらえるようにお願いした。
「お客様。大変申し訳ありませんが、ランチタイムで店が混み合っておりまして、ご協力いただけないでしょうか……」。ダイレクトに「席を空けてください」とは言わずに、それとなくお願いするのがセオリーだ。相手のプライドを傷つけず丸く収まる可能性が高い。
しかし、今回は運悪くお客が怒り出した。「ほかにも、食べ終わったのにのんびり座っている客がいるだろう?なんでオレだけに帰れ、と言うんだ!」。周囲のお客が振り返るほどの大声で、A君に抗議して、そのお客は会計を済ませ店から立ち去った……。
以上が、A君からのクレーム発生の報告だった。
「怒って帰ったお客様の言う通り、ほかにも食事を済ませた後、長居をしていたお客はいたの?」と電話口で私。
「今日はクレーム対応に追われて分かりませんでしたが、ランチや夕食時の混んでいる時間帯に、長居をするお客様が結構多くて困っています」。
「お客様は平等に扱うのが大原則だから、ほかにも同じくらいの時間、居座るお客がいたのなら、その人にも席を空けていただくよう頼むべきだったね。次から注意しよう」。
「申し訳ありません」とA君。その時、私はあるアイデアを思い付いた。
「A君、来週の店長会議の後、時間はあるかい?」
「はい、大丈夫です」。
「では、時間を空けておいて。よろしくね」。そう言って私は電話を終えた。
○月△日 昼
迷惑な客を減らす工夫
午前中の店長会議の終了後、私がA君を連れていったのは、ベテランBさんが店長の店だ。業績好調で、クレームの発生件数も少ない優良店である。ランチタイムの忙しい時間帯だったが、無理を言って店長以下、ホールスタッフの働きぶりを見学させてもらった。
「何が君の店と違うか分かるかい?」。しばらくして私はA君に尋ねた。
「この店では、お客様のグラスが空くと、すぐに気が付いて、水を注いでいますね。私の店だと、お客様から声を掛けられるまで気が付かないことも多いのですが。空いたお皿を片付けるのも早い」。
「よく気が付いたね。この店のホールスタッフは、お客の状態をよく観察しているんだ。ほかにも何か気が付かない?」。
「あっ、ウチの店と違って、食事を済ませて何十分も居座るお客が見当たりません!」。
「その通り。キビキビとスタッフが動き、店内のお客一人ひとりに目が行き届いている店では、お客様は混んでいる時間帯に長居をしない。お客様にも店に協力しようという気が芽生えるものなんだ」。
「なるほど」とA君。
「よくお客様を見ているから、クレームの発生も未然に抑えられる。良い店はお客様と良い関係を築けるんだよ」。
A君がうなずく。
「それと大声で騒ぐグループ客など、周囲のお客に迷惑を掛けたり、不快にするお客には、できるだけ早く対応すること。迷惑な客は、店員の目が行き届いていない店に集まるから気を付けないとね」。
「今日は本当に勉強になりました。未熟者ですが、今後もご指導よろしくお願いします」とA君が頭を下げる。
「まだ店長になって間もないんだから、できることから頑張っていこう。君なら優秀な店長になれるはずだよ」。最後にそう励まして、A君と別れた。
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