「どうしてくれる!?」クレーム担当者の奮闘日記

第10回
外国人スタッフにお客がキレた
「店員の態度が気に入らない」

このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。

文/水野 孝彦(日経レストラン)、イラスト/蛭子 能収
2006年7月10日

○月×日 夕方
常連客と店員が口論

 「こんな料理は頼んでいない。作り直せ!」─。スタッフやお客様の勘違いで生じるオーダーミス。一度起きてしまうと、お客様とスタッフのどちらに非があるかはっきりしない場合が多い。その時は、「すみません」とお詫びの言葉を伝え、急いで作り直せば大事に至らない場合がほとんどだ。

 しかし、それが昨日、予想外の大きなトラブルになってしまった。常連客の中年男性が、海外からの留学生でアルバイトのAさんを怒鳴りつけ、さらに、「料理を間違えても謝らない。こんな店員は辞めさせろ!」と店長に言ってきた。店長の説明はこうだ。

 「お客様に『謝れ!』と言われても、何も間違えてないから、と最後まで謝りませんでした。それがお客様の怒りを増幅させたようです。一方で、Aさんは店を辞めると言っています。仕事ぶりは真面目だったので残念です」。

 明らかに理不尽な場合を除けば、何かトラブルが発生した時に、自分たちの方から「すみません」と言って誠意を示し、お互いに冷静に話し合うのが、サービス業として必要な行為だ。

 だが、外国人のAさんには、すぐにお詫びの言葉を口にしたり、常に笑顔で応対するといった日本風の接客は理解しづらいのかもしれない。

 トラブルから従業員を守るのは店側の責務であり、クレームで個人的に悩んで辞める従業員が存在してはならない。ただ、Aさんの対応は、当社に向いているとも思えない。彼女も感情的になっているのだろうが、「辞めたい」というなら引き留めないのが彼女のためかもしれない。同時に、外国人アルバイトに日本風のコミュニケーションを理解してもらう方策を考えなければと感じた。

○月△日 午前
自分の偏見を猛省

 先日のトラブルについて店長から再び電話が入った。Aさんは一方的に、言いがかりを付けられていただけで、かわいそうだという声が、一部始終を見ていたお客様から入ったので、Aさんを引き留めたいという。

 私は、店長の提案に賛成すると同時に、自分自身を反省した。語学力の問題や文化の違いで行き違いは起こりやすいから、Aさんがお客様を怒らせたのだろうと思っていたからだ。

 しかし、これで一件落着とはいかない。今回のトラブル相手は常連客。お客様との関係を修復する手を打たなければ、またトラブルになりかねない。

 今回のように、お客様が感情的になり、特定の従業員を敵視するようになってしまった場合には、その従業員と話し合う機会を作ってもらうようにお願いしている。従業員の側が「先日は不愉快な思いをさせて……」と相手を立てれば、お客様も「この間は言い過ぎた」と折れてくれる可能性が高いからだ。

 ただ、ごく一部だが、外国人スタッフにやたらと辛く当たる理不尽な人がいるのも事実だ。もし今回のお客様がそういったタイプで、Aさんへの態度を変えていただけないなら、もう店に来ていただけなくても仕方がない。理不尽なお客から従業員を守らないと、店全体の士気が大きく低下してしまう。とにかくお客様に連絡してみよう。

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