経営者のためのカンタン法律講座「それは、違法行為ですよ!」

第4回
裁判所からの「支払督促」無視しても大丈夫?

講師/外国法共同事業オメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所 パートナー 弁護士 前田 陽司
イラスト/服部 幸平
2005年11月18日

身に覚えがなければ2週間以内に異議申し立てする

 最近、「振り込め詐欺」で、「支払督促」制度を悪用した架空請求詐欺事件が増えています。裁判所から突然、督促状が届き、身に覚えのないことで金銭の支払いを迫られるというものです。

 この「支払督促」は、貸した金を相手が支払わない場合などに、債権者が簡易裁判所を通じて支払いを求めることができる制度です。氏名や住所、請求額、理由などを記入した書類を窓口に提出すると、簡裁から債務者に督促の通知が発送されます。

 問題なのは、簡裁は書式さえ正しければ、内容の真偽に関係なく、申請を受理して督促状を送る点です。手続きの簡単さを逆手に取られ、悪徳業者に利用されているわけです。

 受け取った側は、これを放置してはなりません。2週間以内に異議を申し立てないと、相手側の主張を認めたことになってしまうからです。最悪のケースでは、その後で差し押さえされる可能性もあります。

 身に覚えのないことで差し押さえなんて、理不尽に思われるかもしれません。しかし、異議申し立ては簡単なので、恐れる必要はありません。簡裁に連絡して、督促状の内容に異議があると告げればいいだけです。すると、通常の裁判に移行し、相手方に反論できるようになります。

 また、支払督促がハガキで来ることはありません。普通郵便のようにいつのまにか郵便受けに入っていることもありません。封書で「特別送達」という、書留と同じような形で送られます。郵便局の配達員は必ず本人に手渡しし、受取人の名前や日時が記録されます。

 悪用のイメージが付いてしまった支払督促ですが、本来の目的は裁判所を使うことで、「黙っていたら訴訟に移行する」という、債権者側の強い意思を示すことにあります。債務の存在や額が明らかであるにもかかわらず、相手がなかなか支払ってくれないケースでは、実務上でも効果があります。債務者に異議がなければ、早くて1カ月半程で強制執行手続きも可能です。

 支払督促のほか、少額訴訟で争うケースもあります。少額訴訟は60万円以下の少額の金銭トラブルを解決するための制度です。敷金の返還や交通事故の損害賠償金、給料、商品代金の未払いなどで使われます。例外を除き、一回の審理で双方の口頭弁論が行われ、その日の内に判決が出るのがポイントです。

 少額訴訟は「この程度の金額なら大丈夫だろう」と高を括って支払わない相手に効果的です。ただし、審理は一発勝負です。判決に不服でも控訴できませんので、十分な資料を集める必要があります。

前田 陽司氏(まえだ・ようじ)

 1964年広島県生まれ。87年、東京大学法学部在学中に司法試験に合格。
 88年卒業後、90年弁護士登録。
 「起業家サバイバルガイド01」をはじめ、多数の著書を持つ。
 現在、外国法共同事業オメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所 パートナー。

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