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現実主義に目覚めよ、日本!

第75回
北京五輪は「成功」のレベルが低い

東京財団前会長 日下 公人氏
2008年7月10日

 以前にこのコラムで、日本のマスコミ各社が連携して、中国に「北京オリンピック報道8原則」をつきつけるべきだと書いた(第64回:北京オリンピックこそ中国を教育する好機)。オリンピックが間近に迫り、そのときのわたしの危惧が、現実のものとなりつつある。

 中国共産党の幹部は今、たいへん困っているはずである。オリンピックは成功させなければいけない。しかし、中国の現状ではまだオリンピック開催は無理であった。いろいろボロが出てきた。ただし、「少し早過ぎた」「無理だった」と分かる以前に強引に押し切れば、押し切れると思っているのではないか。

 中国共産党政府が考える「成功」とは、中国国民が共産党を仰ぎ見ることでオリンピック開催が政権の安定につながり、中国国民が中華人民共和国を誇りに思えば成功なのである。

 では、中国国民はどういうことで誇りに思うのか。例えば、金メダルをたくさん取ったとか、外国人がたくさん見に来て褒めてくれたとか、オリンピックというシステマティックな大行事を無事にやり遂げて、中国人自身も自信がついたとか。そして中国国民が「共産党は偉い」と思う。それが「成功」だと中国共産党政府は思っている。

 しかし、その程度が「成功」では、国としてのレベルが低い。まず、外国の評価を当てにしているのは、まだ国がきちんと独立していないからである。プライドがない。

 金メダルの数をやたら喜ぶ。インチキしてでも増やそうと思うのは、やはりレベルが低い。そういう国は、オリンピックを開催する資格がない。

 日本人が考える「成功」とは、自分たちが満足したかどうか。そして、若い人たちの元気が出たかどうかである。ただし、東京オリンピックのころの日本は、道路や下水道など社会インフラの整備が進むことが成功だった。反対運動があって進まなかった工事が、オリンピックを口実にして進められた。

 東京オリンピックの時代であれば、それは成功だった。ところが現代の日本人はそんなことを「成功」とは言わない。道路は造ればいいし、反対運動は何とかして突破すればいい。「オリンピックをきっかけにするのは邪道だ」と国民は思っているはずである。

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