バックナンバー一覧▼

現実主義に目覚めよ、日本!

第45回
天皇に伝わるヒメの仕事、ヒコの仕事

東京財団前会長 日下 公人氏
2006年11月30日

 上田篤さんという人がいる。1930年(昭和5年)生まれで、京都大学の建築科出身だから専門は建築なのに、いつの間にか建築から民俗学のほうへと研究の内容がどんどん変わってきた。専門を超えていく人だといえる。

 京都大学の建築科といえば、上田さんの少し下の学年には黒川紀章さん(建築家)がいたはずだ。黒川さんは美術館や公共建築などのジャンルで世の中に出た。公共建築のほうが予算はたっぷりくれるし、好きなことができるのだろう。だから、他の多くの建築家も黒川さんに追随した。

 ところが、上田さんは町家の研究から始めた。京都や大阪の町人の家、それも住宅部分と商売部分がどういう構造になっていたかを、その生活から見ていくのだ。こういう生活だから、こういう商売だから、こういう建物になるという上田さんの研究を見て、みんなが感心した。

 すると次に上田さんは、街並みの研究を始めた。京都には、研究ができるような街並みがまだ残っている。さらに10年くらい経ってから会ったときは、今度は神社ばかり研究して、神社の大家になっていた。京都・奈良・大阪にいれば、神社は山ほどあるから、研究対象には事欠かなかっただろう。

 それからしばらくすると、上田さんは今度は沖縄に行くようになった。神社を研究していれば、それは天皇の研究になる。そして天皇の源流をどんどんさかのぼっていくと、日本には昔、天皇を戴く前の時代があったことに気づいた。「前天皇制」時代である。

 つまり、各地に豪族が住んでいて、その豪族の中の親分を何らかの原理で上に戴くようになり、それが天皇になっていって、今も続いている。その、前天皇制の時代を見ていくと、約1万年さかのぼると上田さんは書く。『一万年の天皇』(文藝春秋)である。

 
 

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。