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現実主義に目覚めよ、日本!

第42回
「心情」から語る靖国論(5)
~国民の心にはマグマがくすぶっている~

東京財団前会長 日下 公人氏
2006年10月19日

靖国問題は(A+B)×C

 靖国問題への国民の関心は8月15日がピークで、そのあとはすっかり離れてしまった。だが、無意識の中で国民の心にくすぶるマグマは今もあると思う。それをきちんと整理して議論しないといけない。

 靖国問題については、わたしは「(A+B)×C」だと思っている。Aとは、日本の俗信や民間信仰などの、マグマのような「国民の心」のことだ。もっとも日本人は「わたしは無宗教だ」などという人が多いのだから、あまり深くは考えていないのだが。とはいえ、そう言いながらも日本人はそれぞれ心の底で何かを思っている。それがA。

 Bは、政治と裁判と法律のこと。この決着がついていない。A+Bは、中曽根元首相のころから議論しているのに決着はついていない。そこへ「×C」がきた。Cとはチャイナ(=中国)のことだ。

 憲法、裁判、宗教法人法、あるいは「首相とはなんぞや」とか、「天皇とはなんぞや」とか、そういったA+Bをきちんと解決しておけば、Cがきたときでも対応できるのだ。しかし、A+Bが放ったらかしになっていたところにCが入ってきたから、話はややこしくなった。

 今、実はCについても正体不明のまま議論をしている。中国人自身は、はっきりしているけれど、日本人が中国の研究をしていないから、Cのことが分からない。

 勝手に自分たちのほうで、「ではA級戦犯だけを分祀すればいいんでしょう」など、日本の常識で中国を解釈している。「これで関係が改善するはずだ」と思っても、それではちっとも改善されない。

 日本は中国対策が全然ダメだった。同時に、日本国内対策もダメだった。その結果として、靖国問題の火種は今もくすぶり続けている。

 
 

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