第37回
「ルール」を守る良識ある日本人の功罪
東京財団前会長 日下 公人氏
2006年8月10日
中国に抗議した理髪店店主は日本人の恥か
ちょうど瀋陽の日本総領事館の事件(2002年5月、中国の武装警察官が治外法権である日本総領事館に立ち入り、亡命を求める北朝鮮住民5人を身柄拘束した事件)が起きたころ、早稲田大学ではこんなことが起きたそうだ。
早稲田大学には中国人の留学生が730人ほどいるのだが、彼らのところへ、一斉に中国の親から「おまえは大丈夫か、まだ生きているか、日本人に仕返しを受けているんじゃないか」と問い合わせがあった。
そこで留学生たちは「大丈夫です、日本にいる方がよっぽど安全です、日本人は紳士的です」と返事をしたらしい。大学周辺では、商店街の理髪店で「中国人の散髪はしない」と断られた程度だった。
だが、その理髪店の店主は「日本人の恥」なのだろうか。そのような人がいたせいで、日本は損しただろうか。
僕はそのくらいの反応があるほうが正常だと思っている。つまり、日本人が730人ほどの中国人留学生に対して、誰も何もしなかったら、中国側はまず判断に苦しむだろう。
「よっぽど何か奥深いことを考えているのだろう」とか、「あるいは胡錦濤政権を恐れていて、大学当局も特別警備をして学生を抑えつけているのではないか」とか、「胡錦濤政権にこびているのではないか」とか、「日本人全部、もう腰が抜けているんじゃないか」とか、中国側は何らかの憶測をするに違いない。
そういう意味では、日本人の中にも留学生に卵でもぶつける人がいたほうが正常だと思うのだ。みんながやってはいけないけれど、少しはそういうことがあった方がいい。
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