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現実主義に目覚めよ、日本!

第20回
問題の根本を「感性」で考えるべき時代が来た

東京財団前会長 日下 公人氏
2006年3月2日

国民の気持ちは「理性」よりも「感性」に傾いている

 行政改革にも、少し手直しが必要になってきた。国家は悪い、公務員は悪いといわれ続ければ、まともな人は公務員にならなくなる。それでは困るわけだ。そういう兆しがあるから、そこを手直しをする必要がある。

 立派な人に国家公務員になってもらうにはどういう方法があるか。給料を上げるとか、天下り先を世話するとか、出世を早くするとか、そういうことばかり要求するのは下品な人だ。“国家のためにやりがいのある仕事をやりたい”というのが上等な人なのだから。「待遇がいいぞ」といわれて来るような人は、あまり上等な人じゃない。

 今や、日本国民の多くがそう思っている。それは、藤原正彦さんが書いた『国家の品格』(新潮新書)という本が爆発的に売れているところに表れている。

 さらに、この本の前に同じような売れ方をしたのが養老孟司さんの『バカの壁』(新潮新書)だった。これらの本の共通点は「知性」だ。『バカの壁』でいえば、国民が知識や知性についてノイローゼになっていて、「頭がよくなればいいことがある。おれは悪いからダメなんだ……」と、あの本を買ったのだろう。

 それから、料理教室を開いて大成功している人に、「どんな料理を教えているんですか」と聞いたら、「頭がよくなる料理というのを教えたら、わんさかお客が来るんですよ」という。「じゃあ、頭がよくなる料理って何ですか」と聞くと「簡単なんですよ、クルミをバンバン入れておけばいいんです」と。

 たしかにクルミは脳みたいな外見をしているからね。それでクルミを入れて、これを子どもに食べさせなさいというと、料理教室は満員になるらしい。このように、日本中が知識や脳について、ちょっと神経過敏になっている。

 そうした中で、『国家の品格』が登場した。これは、国際的数学者が、論理の力はダメだといっている本だ。理屈はダメ、論理でいい数学は生まれてこない、数学は論理ではない、アイデアだ、ひらめきだ、愛情だ、信念だ……なんて書いてある。

 いいかげんな本かどうかは僕にはわからないけれど、ただ一流数学者がいうから、数学のできない人は大喜びして買う。こうしたことからわかるのは、国民の気持ちが、理性よりも感性とか、特に「意」のほうに傾いてきているということだ。

 
 

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