バックナンバー一覧▼

現実主義に目覚めよ、日本!

第18回
10年前の内閣法改正で総理大臣は大統領になった!

東京財団前会長 日下 公人氏
2006年2月16日

このままじゃ東大は東海大に買われる

東京大学の赤門
(東京都文京区本郷)
(写真提供:PANA通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 「意」がある政策を行うことを「プラグマティズム」という。「アカデミズム」ではない。世界中を見渡して、プラグマティズムの国はアメリカと日本だ。イギリスはノーベル賞をとるが、それはアカデミズム。アカデミズムでは飯を食えない。あまり人も尊敬してくれない。香港より、シンガポールより貧乏だ。優秀なイギリス人はみんなアメリカへ行ってしまう。

 そうした視点で、今やっている小泉改革を見てみると、例えば国立大学を独立行政法人にして、文部科学省はもうお金を出さないから自分たちで食っていけといった。お金の儲かるようなことをして、会社めぐりをして、自分たちでお金を集めて食っていきなさいという自由を与えたわけだ。これは、アカデミズムを捨ててプラグマティズムになれということ。だから大学の中のアカデミズム一本槍の先生は怒っている。「おれのやっていることは尊いのに、おれは要らないのか」と。

 僕も教わったが、東京大学の先生にはすごい人がたくさんいる。『源氏物語』の授業で、わずか5行か10行を教えるのに2時間かかるのだから。あるいは英語でも、3行で2時間経ってしまう。先日出くわしたのが、黒板いっぱいにドイツ語を書いて教えている先生。これは助詞、助動詞、何とか詞、何とか詞……。は昔から学説があって、まだ勝負がついていない……。勝負がついていないことを2時間も教えるなといいたい。教えている本人はうれしいらしいのだが。

 学生はそこでアカデミズムの雰囲気を感ずる。そして、「これはいいものだ」と思った人が後継者になるわけだ。大部分の人は「いや、おれは高級なことを勉強した」と思って、あとで全部忘れてしまう。まあ、アカデミズムも悪くはないのだが、それほどニーズはないわけだ。

 そうした中で大学改革が始まって、「それでどうでしたか」と聞いたら、実は東京大学の教授たちの「意」はアカデミズムにも向かっていない。でもプラグマティズムは嫌いだ。結局どこへ向かっているかというと、派閥をつくって予算を取るとか、派閥をつくって誰かを除外するとか。そんなところにばかり「意」が寄っているという。もしこれが本当だとすれば、今に東京大学はつぶれてなくなる。他の大学が買いにくる。

 昔、東大を全部まとめて、誰が一番高値で買ってくれるかという議論をしたことがあるが、それは東海大学じゃないかという結論だった。そのときの入札の条件として、東京大学という名前は残るのだろう。「東海大学本郷分校」となると、値段が下がるんじゃないかとね。では、今いる教授たちはみんなくっついてくるのか。それでは値段は暴落するだろう、とかね。

 
 

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。