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現実主義に目覚めよ、日本!

第10回
偏差値によって消えたエリートの気骨
~“オレがやらずに誰がやる”の精神は何処へ~

東京財団前会長 日下 公人氏
2005年12月16日

文部省の規定では「三等職」待遇

日本人学校
日本人学校の授業風景(フランス・パリ)
(写真提供:PANA通信。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 以前、中国の大学でイベントをしたとき、ある日本人の大学教授に「日下さん、私はあなたの教え子です」といわれた。僕が「あなたを教えた覚えはないのですが」と答えたら、その人は「以前に海外赴任したときに、日下さんに習った」と教えてくれた。

 海外に住む日本人が増えた十数年前に、当時の文部省(現・文部科学省)が、ニューヨークやロサンゼルス、シンガポールなどに、日本語小学校をたくさんつくった。そこの先生は文部省から派遣された。毎年20人から30人ずつ派遣して、何年か経ったら日本に戻すわけだ。僕はその派遣される先生たちに、海外で勤める心がけを教えたことがあったのだ。

 日本人小学校の先生は、海外といえども日本人の子どもに日本のことを日本語で教えるのだから、仕事自体はそれほど大変ではない。しかし、そうはいっても海外勤務だから、教える子どもたちの両親はどんな気持ちで、どんな環境の中で働いているのかを、僕が教えてほしいという要請だった。本当はそうした両親は、帰国したときに子どもが高等学校に受かるようにと、偏差値のことしか考えていない。しかし文部省としては、やはり日本人の魂を少しは教えておかないといけない、ということらしい。僕は文部省に頼まれて、先生たちの先生をした。

 それに対して1万5000円ほど支払われる。その支払いのために捺印する紙を見ると、「三等職相当」などと書いてある。そこで僕が「お国のためなのでタダでいいですよ」と言ったら、文部省の人は「タダでは困ります」と答えた。僕にしてみれば、そんなものにペタペタと判子を押すほうが、よほどくたびれるし、1万5000円も、もらうほどのことでもない。しかも「三等職待遇」などと扱われるのも、嬉しくない。それでも文部省の人は「私が困ります」と押し付けてくる。

 ではなぜ「三等」なのかと聞くと、「文部省の中の規定で待遇のいいほうにしました」などと答える。バカ野郎、僕は最初から文部省なんかに入らなかったんだよ。そもそも僕の友達の中でもできが悪い人が文部省に入っているんだから。その場ではそこまで言わなかったけれど、だからといって「文部省の規定で三等職になった」といわれてもね。そんなことをやっているから、逆に講師が来てくれないのだ。

 
 

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