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現実主義に目覚めよ、日本!

第2回
これから追い込まれるのはアメリカだ!
~郵政だけが争点になる日本は、実はゆとりの国~

東京財団前会長 日下 公人氏
2005年10月21日

ヨーロッパが作り上げた2つの叡智を無視するアメリカ

 日本は1500年前から歴史がある。アメリカなんて、いくら探したって200年か300年しか歴史がない。いかにアメリカの底が浅いか。これはアメリカに行って住んでみれば分かる。それはしょうがないことだ。アメリカ人の多くはヨーロッパに対する劣等感が心の底にあるから、その劣等感の裏返しとして傲慢に振る舞うわけだ。

 アメリカは、ヨーロッパ文明を尊敬したくないのである。その代わりにその源流とも言えるローマ、ギリシャ文明を尊敬する。ギリシャ、ローマ精神が、アメリカには実に素朴な形で生きている。ヨーロッパの人々が新天地アメリカに植民を始めた当初、カトリックは来ていなかった。だからカトリックの人は基本的には大統領にはなれない。J.F.ケネディは例外だけれど…。

 アメリカ人はヨーロッパの中世につくり上げられたものは嫌いだ。ギリシャ、ローマ時代のものなら喜ぶ。だからワシントンに行くと、官庁の建物はほとんどギリシャ、パルテノン建築。図書館とか博物館とか銀行とか、すべてギリシャ建築だ。しかし、ヨーロッパの中世1000年間はけっして「暗黒時代」などではなく、ヨーロッパ人が一生懸命つくりあげた叡智が2つある。これがアメリカには取り入れられなかった。

典型的なギリシャ建築のニューヨーク証券取引所
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 1つは奴隷制の廃止だ。ギリシャ、ローマには奴隷がいた。しかしヨーロッパ1000年の間に彼らは奴隷制を原則的に廃止した。完全に「ない」というと、実はあったという話がまた出てくるので「原則的に」と言っておく。実は、修道院の中にあったわけだから…。

 アフリカ人たちをポルトガルへ連れて来て、奴隷としてヨーロッパ中の修道院や教会が下男がわりに買っていたようだ。その取引記録がマドリッドにある。そのとき売れ残ったアフリカ人がマドリッドに住むようになった。その子孫たちのアフリカ人街がポルトガルにある。

 「何だか知らないけれど、やたらに多くのアフリカ人がここらへんに住んでいるんだよ」と日本のポルトガル大使が言っていたが、少しは事情を勉強してほしい。時には文化外交も担わなくてはならない外務省の人間として、赴任してしばらく経ってからもこの発言というのは、いかがなものか。過去の汚点をポルトガル人は外国人には言わないので、知る由もないのかもしれないが…。こうした抜け穴はあったものの、ヨーロッパには一応、奴隷制はなくなった。ところが、プランテーションの労働力が必要だったアメリカは、欧州大陸のそんな潮流に背を向けて、積極的に奴隷制を取り入れたわけだ。

 
 

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