第20回
ライブドア事件の原点はここにあった!
~ホリエモンとの会話でわかったこと~
経済アナリスト 森永 卓郎氏
2006年2月27日
増資を「利益」に組み込んだ錬金術
1月16日、ライブドアを東京地検特捜部が強制捜査。翌週の23日夜には、証券取引法違反の疑いで堀江貴文社長(当時)ら4人が逮捕された。
あれから1か月たった。新聞、テレビのホリエモン報道が一巡したところで、改めてこの事件について考えてみたい。
ライブドア・拘置所に入る宮内容疑者を乗せた車
証券取引法違反容疑で逮捕され、東京拘置所に入るライブドアの投資・財務担当取締役宮内亮治容疑者を乗せた車(東京・小菅)
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)
まず私にとって興味深かったのが、強制捜査後の株価の動きである。直後に日本の株価は急落。世界中の株式市場に影響を与え、一時は世界同時株安の様相を見せた。しかし、日本の株価が下がったのは2日間だけ。10日後には元の水準に戻した。
これは何を意味しているのか。
確かに、日本経済全体が上昇トレンドにあったためもあるだろう。しかし、それ以上にマーケットには、「この事件は、他企業に波及しない」という判断があったはずだ。つまり、「ライブドアほど悪質なケースは例外的である」と認識されていたのである。
世間が間違えていたのは、「ホリエモンは法律の網の目をくぐっていた」という認識である。
そうではなく、100%違法行為を繰り返してきたのだが、証拠をつかまれなかったから、捕まらなかったというだけなのだ。
そもそも彼がやっていたことは、完全な「錬金術」であった。
増資をした場合、時価発行だろうがなんだろうが、企業会計の原則では「資本の部」に組み入るのが決まりである。増資をしても資本が増えるだけで、利益が増えるわけではない。
ところがホリエモンは、株式交換、投資事業組合、証券会社を巧妙に組み合わせて、資本の増加を利益にすりかえていたのである。
昨年のニッポン放送株取得に際しても、彼は法律違反を犯している。
発行済み株式の3分の1以上の株式を市場外で取得する場合には、株式公開買い付け(TOB)が必要であるにもかかわらず、「時間外ではあるが、市場での取引だからTOBの義務はない」と主張。リーマンブラザーズから800億円の資金調達をした当日、たまたま時間外市場にちょうどよい金額の株が売りに出ていたから、それを買っただけだと強弁したのである。
おそらく、売り手の村上ファンドと口裏をあわせたのだろうが、当時はそれが立証できなかった。そのため、ニッポン放送の買収は合法とされ、ホリエモンは捕まらなかっただけなのである。
また、2月7日の毎日新聞の報道によれば、元幹部から「東京地検特捜部の事情聴取を受けた」という報告を受けた直後、ホリエモン本人が手持ちの自社株600万株を売り抜けて、約40億円の利益を得ていたという。
確かに、12月下旬に790円台をつけてから、ライブドア株はずるずると値を下げており、個人投資家たちは「下がる要因もないのにおかしい」と不思議がっていたものである。本人が大量に売っていたのでは、下がるのも当たり前である。
これなどは、インサイダー取引のお手本のようなものである。ホリエモンはインサイダー取引の限りを尽くしていたといってもいいだろう。その後も、粉飾決算が明るみになるなど、どう見ても「網の目をくぐる」どころでないことは、ご存じの通りである。
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