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構造改革をどう生きるか

官主導で行われた金融再編

UFJ強制捜査・押収物を運び出す係官
家宅捜索を終え、押収物を運び出す係官(2004年10月8日午後11時すぎ、東京・大手町のUFJ銀行東京本部)
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 特別検査を行っていた2003年10月、金融庁に1本の匿名電話が入った。UFJが資料を隠しているという密告だった。金融庁は隠してある場所も知った上で、UFJに乗り込み、段ボールに山と積まれた隠された資料を見つけたのだった。この検査忌避事件をきっかけにして、金融庁は一気にUFJを追い込んでいった。不良債権の引当率を上げさせたのだ。

 2003年9月期のUFJ銀行の引当率は29.2%だった。他のメガバンクも、三菱東京が30.6%、三井住友が30.5%、みずほが35.2%と、メガバンクはだいたい3割程度の引当金を横並びで積んでいた。相場としてはそんなものだろう。

 ところが、金融庁が特別検査に入った後、2004年3月期にはUFJ銀行の引当率は51.4%、2004年9月期には54.9%に跳ね上がる。これは、要管理債権(要注意先に対する債権のうち3ヶ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権)の55%がかえってこないと見込んだということだ。

 街金ではないのだから、銀行の融資の半分以上が返ってこないという想定はおかしい。金融庁がUFJを追いつめるために膨大な引当金を積ませたのだ。

 追い込まれたUFJはみずほのように増資もできず、行き場を失った。なぜ増資できなかったかといえば、竹中平蔵大臣の天才的な発明ともいえるが、刑事告発を1年間留保したからである。留保されると、増資をしたくても出資者に銀行の状態を正確に説明できない。どちらに転ぶかわからないからだ。

 こうして、増資もできず、三菱東京と合併せざるを得なくなった。その条件としてUFJの不良債権処理を大幅に進めさせ、ダイエーに代表される大口融資先を切り捨てたのだ。こうして、政府の目標はほぼ達成された。

 その後の遺産として残されたのが、50%を超えるとんでもない額の引当金である。こうして、2005年9月の中間決算で、UFJは巨額の利益を上げた。それなら、合併など必要ではなかったのではないか。誰もこのことを指摘しないのはおかしい。

 いずれにせよ、金融庁によって“作られた”UFJ銀行の経営危機の一番の被害者は不良債権処理の対象とされた大口融資先と従業員だろう。

 金融庁の暴走はここで止まらなかった。2004年7月から、今度は三井住友にも検査に入り、巨額の不良債権処理をさせ、2005年3月期の決算で三井住友は黒字予想から赤字に転落した。西川善文頭取はその責任を取って退陣した。

 いま振り返ると、2003年4月の初旬ころ、官邸筋の人に聞いた話を思い出す。彼は「みずほ、UFJ、三井住友の順で国有化するからな」といっていた。実際、その通りに進み、この金融再編がいかに官主導で行われたかがよくわかる。

 シナリオ通りドラマは終わり、いまは最後の大バーゲンセールが行われている。不良債権処理で不動産を買い占めたファンドやおカネ持ちたちにもうけさせるために、今度は地価の上昇が始まるだろう。そして、ただでさえカネ持ちがますます大カネ持ちになる。

 竹中経済再生プランが描いたシナリオはグランドフィナーレを迎えて、小泉総理は9月に花道を去るというわけだ。その背中をきっとニコニコしながら竹中大臣が見送っていることだろう。

 
 

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