欧州は米国式金融資本主義と決別するために「損切り」をする
米国という泥舟にしがみつくことが、どれほどマズいことなのか。それを説明する前に、今回の金融危機に対する欧州と日本の対応を比べてみよう。
金融危機で米国政府が70兆円の救済資金を用意して、そのうち20兆円を資本注入として銀行などにつぎ込むという決定をしたことは既に報道されている通りである。それに対して、欧州はそれを上回る規模の公的資金注入をする構えだ。
これは、一見すると非常に不思議な現象である。なぜなら、インチキ金融商品をつくって売りさばいたのも米国ならば、それを一番保有しているのも米国だからである。そんな米国を上回る公的資金をなぜ欧州は注入するのか。
おそらく、彼らの発想は「損切り」なのだろう。米国式の金融資本主義から手を引いて、いったん身辺をきれいにしてから、まともな金融に戻そうというのが欧州の発想なのだ。
では、日本はどうか。わたしが気になっているのは、金融機能強化法に基づいて公的支援を行う規模が、「2兆円以上」としているだけで金額が明らかになっていないことだ。国会で中川昭一財務大臣がその金額を質問された際にも、「2兆円プラスアルファとしか言えない」として、かたくなに金額の公表を拒否している。
ほかの信用保証枠に関してはきっちりと数字が入っているのに、なぜ公的資金の注入だけは枠も示せなかったのか。
そのヒントになるのは、民主党が金融機能強化法について、農林中金(農林中央金庫)を対象に含めることに抵抗したことである。国会でも、すったもんだしたが、まだ明確になっていない。
民主党が疑っているのは、米国のサブプライムローンなどのインチキ金融商品を、日本の地域金融機関である地銀、そして農協や信用金庫、その上部団体である農林中金、信金中金(信金中央金庫)が大量に保有しているのではないかということだ。
現に、農林中金は財務体質が非常によかったのだが、ここにきて自己資本比率が低下して増資するという話になっている。
なぜ農林中金がそうした金融商品を大量に持っているのか。それは、小泉構造改革路線が進行するなかで、地方が疲弊していき、まともな融資先が減っていったことと関係がある。融資先がないのに、下部組織である農協を通じてお金がどんどんと集まってくるために、融資以外でその利回りをとらなくてはならない。
そこで、危険な商品をかなり集めていたのではないか。政府が今回の金融機能強化法の対象に農林中金も含めるというのは、そういう背景があるのだとわたしは思っている。
誤解しないでいただきたいのは、農林中金が粉飾決算をしているとか犯罪的なことを手を染めたというわけではない。おそらく、格付け会社によってトリプルA がついた商品だから、安心して買ったのだろう。それが、突然シングルA になり、さらにジャンクに落ちているのがいまの状況である。
なんら悪事を働いていなくても、大きな損失が出ることがある。むしろ、悪事ではないからこそ、かえって先が見えないのだ。損失がいくらになるか不明なので、「2兆円プラスアルファ」という言い方をしているのだろう。
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