正直者がバカを見ないように早急な全容解明が必要
では、前ページの1~3の一つでも当てはまっているケースはどれだけあるのか。
舛添要一厚生労働大臣は、10月3日の記者会見で、1のケースが15万6000件、2が53万3000件、3が75万件の合計143万9000件もあることを明らかにした。重複分を除いても、改ざんが100万件を超えているのは確実といえよう。当然、すべてを調査するのだろうと誰もが思うところだが、舛添大臣は、当面6万9000件だけを調査するという。
民主党の長妻昭議員が、「サンプル調査でよいから、疑いのある記録全体を対象にして改ざんがあるかどうかを調べて欲しい」と要請した。つまり、この3つのケースのそれぞれについて、本当に偽装があったものの比率を知りたいというわけだ。きわめてまっとうな要請だと思うのだが、これを舛添大臣は拒否した。
疑わしい記録が100万件もあるのに、6万9000件だけ調べるだけでよいのだろうか。これでは全容解明を進めないと断言したも同然である。本当に国民のことを考えているのか、極めて疑わしい。
もし、コストも時間もかかるというなら、1000歩も100万歩も譲って、ねんきん特別便のようにして、過去からの標準報酬月額を全員に知らせてはどうか。過去の給料の額を正確に覚えていなくても、30万円だったはずの給料が、ある日突然9万に変わっていれば、誰だっておかしいと気づくはずだ。
なぜ、それをやらないのかといえば、パニックになるのを恐れているからだろう。そして、政府・与党は選挙への影響を考えているに違いない。メディアであまり報道されないのをいいことに、うやむやに済ませてしまうつもりなのかと勘繰りたくもなる。
しかし、被害にあったサラリーマンの立場になってみれば、こんなひどい話はない。30万円の給料をもらっていて、それに見合った保険料を支払っていたと信じていたにもかかわらず、もらう段になって、「あなたの給料は10万円だったので、その分の年金しかもらえません」と言われたらどうなるのか。
偽装を行った経営者は、従業員の金を懐に入れたのだから明らかに泥棒である。罪に問うのが当然だとわたしは思う。そして、それを社会保険事務所が指導していたとしたら、それは泥棒の共犯である。これを見逃すのは、社会的正義に反する。
さらにこの問題で重要なのは、時間がたてばたつほどデータが消える可能性が増していくということだ。着服、横領をした企業というのは、そもそも経営が危ないところである。その企業がつぶれてしまうと、給与データは散逸して復旧は難しい。
宙に浮いた5000万件の場合もそうだったが、払った払わないという話になると、証拠がないとどうしようもないのだ。何十年前の給与明細を保存している人は少ないだろう。そうした会社が生きているうちに、早急に全容を解明する必要がある。
被害を受けるのは、まじめに厚生年金保険料を支払ってきた国民なのだ。正直に働いたものがバカを見るのではたまらない。これは、選挙がどうこうという問題とは別なのである。
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