モルガン・スタンレーに出資した三菱UFJが見るものは?
米国型の新自由主義、金融資本主義、市場原理主義は、いわゆる小泉構造改革を通じて日本にも導入された。それに対して、わたしはこのコラムを通じて、そのやり方がインチキであると言い続けてきた。
そしてようやく、今回の米国の金融危機によって、その正体が明らかになろうとしている。同時に、それが決して持続性のあるシステムではないことも明らかとなった。
リーマン・ブラザーズの破綻は、サブプライムローン問題の終わりなのではない。米国型金融システムである金融資本主義が瓦解する「終わりの始まり」になるだろう。
ところが、ここで愚かしいとも思える行動をとった日本の金融機関が2社現われた。野村ホールディングスと三菱UFJフィナンシャル・グループである。
野村ホールディングスは、リーマン・ブラザーズのアジア太平洋部門、欧州・中東部門、情報部門の買収を行った。もっとも、こちらはせいぜい数百億円という規模だろうから、「高い授業料だったな」で終わるはずである。
問題は、三菱UFJフィナンシャル・グループだ。同社は、モルガン・スタンレーの株式のうち約21%を取得することで正式合意したと発表したが、その出資額は9500億円。ほぼ1兆円である。
おそらく、モルガン・スタンレー自身から、あるいは米国政府から救済の要請が出ていたのだろう。本来なら救済出資の前に、じっくりと資産査定をしなければいけないのだが、何日もかけずに出資を決めてしまった。
しかし、モルガン・スタンレーがやっているビジネスというのは、その1つ1つが金融工学を駆使し、さまざまなからくりを持った資金提供なのである。その構造を1つ見破るだけでも大変なのに、三菱UFJがこれだけの時間でその実態を解明できたとは、到底思えない。破綻したリーマンでさえも、いまだ本当の破綻原因が解明されていないほどなのである。
あくまでもわたしの想像だが、「よし! これで米国第2位の証券会社の筆頭株主になれる!」というノリで出資を決めてしまったのではないか。ところが、蓋を開けてみたら、中がボロボロに腐っていたということも十分にあり得るのだ。
表面的には、バブル崩壊以降に日本が米国の証券会社にやられた裏返しのように見える。だが、決定的に違うのは、日本のバブル崩壊は、不動産価格が下がって担保割れをしたことが原因であり、経済がガタガタになったわけではなかった。だから、資産査定をしなくても、買収する会社に一定の資産価値があることははっきりしていた。
だが、今回の米国の金融機関の闇はずっと深い。彼らは、いったい何をやっていたのか。金融工学の粋を集めたといえば聞こえがいいが、要は、さまざまな訳の分からないテクニックを弄して証券化していたわけだから、実質的な資産は何もない可能性さえある。砂上の楼閣どころか蜃気楼かもしれないのだ。
「第147回 原油バブル崩壊で経済のパラダイムが変わる」でわたしが述べたように、膨張した金融資本の崩壊とともに、時代の価値観は大きく変わるだろう。
わたしはいま、「まじめに働こうキャンペーン」を一人で始めたところである。人間というものは、汗水たらしてモノやサービスを作りだすことに価値を見いだすべきではないだろうか。少なくとも、金を右から左に動かすことだけで、人の作りあげた付加価値を奪ってはいけないと思うのだ。
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