最早増税ラッシュで辻褄を合わせるしかない
では、この財政悪化をどうやって正せばよいか。
財務省の財政制度審議会の試算によれば、財政の基礎的収支を均衡させるには、歳出を3割カットするか、あるいは消費税19%に上げなくてはならないという。
もちろん、その両者を同時に進めてもいいのだが、少なくもと歳出の3割カットなど、すぐにはできるわけがない。
となると、増税に向かうのはきわめて当然のことなのだ。
そもそも、小泉内閣になってから4年間、増税は「順調に」進んできた。
一例をあげただけでも、2003年5月の発泡酒増税、7月のたばこ増税、2004年1月の配偶者特別控除廃止、2005年1月の老年者控除廃止、公的年金等控除縮小、来年から2007年にかけての定率減税全廃……と、きれいに増税路線を走ってきたのである。
11月には、政府税調が、2007年の税制抜本改革に向けた答申を出すことになっている。
会見する政府税調の石会長
「個人所得課税に関する論点整理」などについて記者会見する政府税調の石弘光会長(東京・霞が関の財務省)
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おそらく、ここで給与所得控除の圧縮、配偶者控除の廃止などが打ち出されることになるだろう。まさに、増税のスケジュールが目白押しなのである。
増税というのは、政治的な緊張関係があると、なかなかできないものである。
だが、そこが衆議院での与党3分の2の力である。いまや増税の流れに反対できる人がいないのだ。
もっとも、消費税に関してだけは、小泉首相は「任期中に消費税を上げない」と公言している。
とはいえ、その任期は来年の9月まで。うがった見方をすれば、来年9月に小泉首相が退陣した直後、消費税を上げるだけの捨て駒のような内閣が誕生するかもしれない。
そのあとに、ポスト小泉の本格政権が登場するというわけである。
福祉の際限なき「一般財源化」が進む
こうした増税が進む一方で、福祉は一般財源化され、国が面倒を見ないという方向に向かっている。
三位一体改革にしても、結局は、何から何まで補助金をカットする話ばかり。しかも、カットの対象になっているのは、欠かせないものばかりなのである。
そのいい例が義務教育費だ。
俵を担いで国会周辺を行進する教育関係者
義務教育費国庫負担制度の堅持を求め、「米百俵の精神」をなぞらえて米俵をかつぎ、国会周辺をデモ行進する教育関係者(東京・千代田区平河町)
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現実に、公立小中学校の先生の退職金に対する補助はカットされてしまった。10月27日には、中学校教職員給与に対する総額8500億円分の国庫負担の廃止が決まった。
だが、よく考えてほしい。たとえ補助金がカットされても、退職金や給料は払わなくてはいけないだろう。
その結果、何が起こっているのか。
弱いところにしわ寄せがきているのである。桜井よし子さんらが調べたところによれば、学校の図書館に新しい本が入らなくなってしまっているというのだ。
図書館だけではない。今後は、公立の学校教育のサービス低下は大きな問題となっていくだろう。
それでも、東京、大阪をはじめとする税収基盤がしっかりとした自治体ならば、そこそこのレベルの教育は受けられるかもしれない。
しかし、税収基盤の弱い地方に生まれると、まともな教育が受けられないという恐れも出てくる。金持ちは私立に行けばいいが、貧乏人はそうはいかない。
結局、地方に生まれた貧乏人は、まともな義務教育が受けられず、さらに貧乏となっていく社会がやってくるのである。
私は、こんな社会はおかしいと思う。機会の平等を確保するからこそ、活力ある社会となるはずだ。義務教育は国で責任をもってほしい。
もっとも、補助金カットは、知事たちの要望だというところが悩ましい。何から何までヒモつきの「補助」はいやだというのがその言い分なのだが、いくらなんでもカットすべき部分を間違えてやしないだろうか。
もともと、三位一体改革の目的というのは、そうではなかったはずだ。たとえば、公共事業において、国の規格で2車線の橋を作るとコストがかかるので、地方独自の基準として1車線で橋を造ることにより、コストを削減する――そういった目的のはずだろう。
ところが、現状はライフラインから義務教育という、なくてはならない部分を次々にカットしてしまっている。目的を取り違えているのではないだろうか。
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