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構造改革をどう生きるか

第4回
「大増税」とライフラインを切り捨てる「福祉カット」が始まる!
~この国に生まれたる不幸を弱者が嘆く時代に~

経済アナリスト 森永 卓郎氏
2005年10月28日

「増税」「インフレ」「戦争」のリスクが高まった

党首討論・小泉首相と前原代表
党首討論に臨む民主党の前原誠司代表(写真右)と小泉純一郎首相(写真左)(東京・国会内)
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 小泉自民党による総選挙圧勝から1ヵ月半がたったが、まだまだその余韻は収まることを知らないようだ。  

 では、与党が衆議院の3分の2を占めるという事態のなか、これからの日本にはどのようなことが起きるのだろうか。

 私は、次の3つのリスクが高まったと考える。それは、「増税」「インフレ」「戦争」だ。

 今回から3回に分けて、それぞれの内容について検討していくことにしよう。

 まずは、「増税」についてである。

 衆議院で与党が3分の2以上を確保したということは、一般の法案は何でも通る態勢が整ったということである。

 たとえ参議院で否決されても、憲法59条の規定により、衆議院で3分の2以上の賛成を得て再び可決すれば、法案は通過するからだ。

 このような圧倒的な力をもった小泉首相が、何をするかといえば、第一に考えられるのが「増税」なのである。

小泉政権は財政再建を果たしていない

 というのも、小泉内閣のなかでまったく成功していないのが、財政再建だからである。

 前回も触れたように、福田赳夫元首相の書生から始まり、衆院の大蔵委員長や大蔵政務次官も務めた小泉首相は、ある意味で生粋の大蔵族といってもよい。

 財務省が小泉首相の政策のサポート役をしているのは、公然の事実でもある。

 そんな背景から、小泉首相が、強い立場を利用して財政再建を進めていくことは容易に想像できる。

 なにしろ、現在の6月末の時点で、国の借金は795兆円。GDPの1.5倍にものぼる。

 これには財務省も強い危機感を持っており、これ以上増やすことはできない状態だ。

 一方で、小泉内閣の4年間で、国債30兆円の枠が守られたことは一度もなかった。「借金王」と自称した小渕首相の時代より国債の発行残高は増えており、利払いもからんでいるために赤字は増大し続ける一方なのだ。

 こんな疑問を持つ人がいるかもしれない。「公共事業は減り、公務員は減少しているはずなのに、なぜ赤字は増大しているのか」

衆院財務金融委員会・笑顔の塩川正十郎財務相
衆院財務金融委員会で笑顔を見せる塩川正十郎財務相。公共投資の対国内総生産(GDP)比について「現在の6・2パーセントから10年ほどかけて欧米並に持っていくことが1つの目標」と述べ、欧米の2パーセント前後に引き下げる考えを示した。財務相が具体的な年限に言及したのは初めて(2001年6月6日午前、東京・国会・衆議院分館)
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 そう、考えてみればこれは不思議である。実は、そこには大きなトリックが隠されているのだ。

 確かに、小泉首相は公共事業を減らしてきた。ところが、その一方で政府消費は増大をしているのである。

 政府消費というのは、公務員が消費する経費と、公務員の人件費を足した金額のことである。GDP統計上には、「政府消費支出」として表現されている。

 いわば、政府による支出のうち、「残る」ものが公共投資で、「消える」ものが政府消費と考えればいい。

「小泉改革」とは単なる経費の付け替えだった!

 実は、この政府消費が、小泉内閣の4年間で一度たりとも減っていないのだ。

 その理由は、小泉首相が行政改革に一切手をつけず、むしろ官僚機構を大きくすることで政策を進めてきたことに関係している。

 では、どういうトリックなのか、わかりやすく説明しよう。

 ここにきて、国立大学や国立病院をはじめとして、多くの機関が独立行政法人化されたことは、ご存じだろう。これによって、確かに見た目の公務員の数は減ってきた。

国立大法人法案・賛成多数で可決
参議院の文教科学委員会で、国立大学法人化法案を賛成多数で可決(2003年7月8日、東京・国会・参院22委員会室)
(写真提供:時事通信社。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 だが、その運営経費は、やはり政府からの補助金として、独立行政法人に与えられるのである。

 どういうことかというと、表面的には公務員の数が減って行政改革が進んでいるように見えるのだが、経費と人件費を足した政府消費で見ると、何も変わっていないのである。単なる費目のつけかえにすぎないのだ。

 それだけではない。

 当初は、独立行政法人化すれば、民間との競争でコストが下がるという意見があった。

 ところが、総務省の調査によれば、ラスパイレス指数で比較すると、独立行政法人の職員の給与は国家公務員よりも7%高くなっているというのである。

 いままでは、中央官庁や国会の監視下に置かれていたものが、いきなり野放しになり、お手盛りで給料を高くしてしまったというのが実態なのだろう。

 このように、政府消費が減っていない(むしろ上がっている)のだから、いくら見た目の公務員の数が減っても、財政が悪化するのは当然のことなのである。

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