長期修繕計画に耐震診断と改修を組み込む
耐震診断の方法でデファクトスタンダードとなっているのは、日本建築防災協会が定めた「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準及び耐震改修設計指針同解説」だ。木造住宅の耐震診断と同じように「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」で認定されている。
耐震改修をした建物も、工事後に改めてこの診断法で検証する。この耐震診断法で安全とされた建物は新潟県中越地震でも無事だったことが分かっており、その実効性はを確認されているといえる。
さて、この耐震診断は誰に頼めばいいのだろうか。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物の耐震診断は、建築士の資格をもった構造の専門家が行うことになっている。木造住宅の耐震診断よりも高度な知識を要するため、建築士のなかでも構造の専門家でないと実施するのは難しい。結果的に、診断できる専門家は木造住宅に比べると少ないだろう。
耐震診断を依頼するときは、市役所や県庁など行政の窓口に聞いてみるのが良いだろう。日本建築防災協会のホームページでも、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの構造別に建築士事務所を紹介しているのでご参照いただきたい。
長期修繕計画の対象は建物の経年劣化
耐震診断を行った結果、耐震改修を実施することになったとしよう。たいていの場合は、1階のピロティー部分に耐震壁を設けたり、柱の間にコンクリートや鉄骨の筋かいを入れたりする。建物の躯体に手をつけるわけだ。
分譲マンションの躯体は共用部分に当たり、個人では改修できない。管理組合の管理対象となるから、耐震診断、改修設計、補強工事は管理組合が専門家に発注して契約することになる。事前には、理事会や管理組合総会の議決を要する。そこでは組合員である居住者たちの合意形成が欠かせない。
居住者間で日ごろから議論を重ね、理解を深めておくことが重要だ。場合によっては専門の委員会を立ち上げ、勉強しながら検討していく方法も考えたい。その際は、構造の分かる専門家のアドバイスを得るといいだろう。
一般に分譲マンションでは長期修繕計画を立て、建物の補修を定期的に行うようにしている。そのために毎月、居住者は大規模修繕金を積み立てている。
この長期修繕計画が対象とするのは、基本的には防水工事や外壁など建物の経年劣化だ。修繕積立金もこうした工事を念頭に算定されている。耐震改修は想定されていないのだ。
そのため通常の修繕積立金で耐震改修を実施するのは難しい。耐震改修を円滑に実施するためには、まず長期修繕計画のなかに改修工事を明示し、資金計画にも組み入れることが大切だ。
また補強工事を考える際には単独で行わず、一般的な大規模修繕と合わせて計画すると効率も良い。エレベーターの修復や外観の塗り替え、縦配管のライニング工事などと同時に実施すると仮設工事などの経費を抑えられる。工事に伴う居住者のストレスも増やさずに済む。
なお、耐震診断や耐震補強を対象に、約700の自治体が助成制度を用意している。耐震診断については診断料の3分の1から2分の1程度を助成し、耐震改修の助成金については1戸当たりの限度額を定める自治体が多い。
管理組合の方はぜひ、こうした助成制度を調べて活用してほしい。日本建築防災協会のホームページも一覧を掲載している。
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