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地震に勝つ住宅・負ける住宅

第8回
耐震性がマンションの資産価値を左右する
~長期修繕計画に耐震診断と改修を組み込もう~

(財)日本建築防災協会専務理事 杉山 義孝氏
2005年11月4日

 建物の耐震に対する関心が高まり、私たちも最近さまざまな質問を受けるようになった。そのなかでよく聞くのが、マンションの場合はどうすればいいのかという声だ。

 国土交通省の調べによると2004年度末現在、日本には分譲マンションのストックが466万戸ある。全住戸数は約4600万戸だから、住宅のおよそ1割が分譲マンションという計算になる。大都市では分譲マンションの占める割合は、さらに高くなるだろう。

マンションストックの推移図

 分譲マンションの多くは鉄筋コンクリート造だ。基礎を十分に配置し、硬い岩盤に届くように杭を打ち、柱や壁は必要な強度を満たしている。…そんなつくりの分譲マンションであれば、木造住宅に比べると相対的には地震に強い。

 しかし、1981年以前に設計された建物では、現在の耐震基準に達していない可能性もある。建設当時の基準は満たしているので違法ではないが、現在の基準には達していない。これを「既存不適格建築物」という。

いかに堅牢に見えても耐震性の弱いマンションは存在する

 既存不適格のマンションは、全国にどのくらい存在するのだろうか。

 2003年の国交省の調査では、共同住宅など木造戸建て以外の住宅が2250万戸を数える。このうち7パーセントに当たる約150万戸が耐震性の面で既存不適格と言われている。このデータには2階建てのアパートや3階以上の賃貸マンションも含まれているから、比較的新しい建物の多い分譲マンションにおける割合はもう少し低いと推定できる。ただし、こうした既存不適格の分譲マンションがあるということも知っておいていただきたい。

要注意のキーワードは「1981年以前」「劣化」「形」「地盤」

 建物が十分な耐震性を有しているかどうかは、木造住宅と同様、耐震診断をすることによって、調べることができる。ではどんな建物は耐震診断をしたほうがいいだろうか。次に示す4つの条件のいずれかに相当する建物では、耐震診断を行ったほうがいいだろう。

 第1は、1981年以前に建てられたマンションだ。もちろん、1981年以前の建物が直ちに地震に弱いと断言できるわけではない。旧基準でも安全率を見込み、余力を持たせて設計している場合もあるからだ。ただ、「診断したほうがいい」とはいえる。

 第2は、建物が劣化している場合。目安となるのは、コンクリートの状態だ。

 正式に鉄筋コンクリートの強度を診断する際は、躯体から直径10センチの円柱状のコンクリートを抜き取り、圧縮力をかけて調べることが必要だ。しかしこうした方法を取らなくても、表面を観察しただけである程度の状況は判断できる。

 外壁表面の仕上げモルタルがはがれ落ちている、鉄筋コンクリート壁の内部に埋め込まれた鉄筋のさびが表面に浮き出ているといった症状が見えたら、鉄筋コンクリートが劣化している可能性は高い。0.3ミリメートル以上の幅のひび割れが多く目に付くような状態も危険な兆候だ。冬季になるとひび割れ内にたまった水が凍り、さらに割れを広げてしまう。

 3つめは建物の形だ。

 梁間方向(建物の短辺方向)の柱の間隔が7-8メートル以上ある場合、この方向に力がかかりやすくなる。また不整形で凹凸の激しい平面形状や、1階部分が自転車置き場や遊び場のあるピロティー形式になっていて耐震壁が少ない建物、上の階にいくほどセットバックするなど立面的に不整形である建物は、地震力が偏ってかかり一部の負担が大きくなる。

 第4は、地盤や敷地条件。

 緩い地盤に建つ建物は豆腐の上に建っているようなものだ。豆腐が揺れたら、その上の建物も当然揺れる。埋め立て地や斜面、あるいは斜面を背にして建つマンションでは、地震が起こると地盤が円弧状に滑ってしまう可能性がある。地中に杭を打っている建物でも、硬い岩盤まで杭の先端が届いていないと意味はない。

 以上の項目に当てはまるマンションでは、耐震診断を実施してみることをお勧めしたい。

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