第18回
“1秒の重み”への理解がクルマの安全性をより高める
モータージャーナリスト 岡崎 五朗氏
2006年3月24日
クルマの安全に最も影響を与えるのはあなた
これまで約9ヵ月にわたってクルマの安全を語ってきたわけだが、改めてバックナンバーを読み返してみると、クルマの安全にもっとも大きな影響を与える要素についてほとんど触れていないことに気づいた。クルマの安全を支えているは交通行政でもなければ道路構造でもハイテクでもない。いまこのページを読んでいるあなた自身、そうドライバーこそが安全を支える屋台骨なのである。
公共交通機関とは決定的に異なる“クルマの魅力”とは、好きなときに好きなところに行けて、なおかつ好きな場所に止まれる自由さにある。その一方で、1.5トンもの物体が時速100kmで走る際の運動エネルギーは膨大であり、ちょっとした操作ミスがとんでもない悲劇を生んでしまう。わずかなミスが何人もの人の命を一瞬にして奪うリスクに直結する……こんな危なっかしい商品などクルマ以外にはない。
だからこそ、クルマを操るドライバーには高いモラルと高度なリスクコントロール術が求められる。プロドライバーのような華麗なテクニックなど身につける必要はない。どうすれば事故を起こさず、巻き込まれず、安全で快適なドライブができるのか。そのための知識を仕入れ、実践することによって、路上での安全性はグンと高まるはずである。
とはいえ、具体的な安全運転のテクニックを網羅するにはあまりにスペースが足りない。ここでは22年間にわたる私の運転経験から得た、安全運転に重要だと思われるポイントをかいつまんで紹介していこう。
幸いなことに、私は免許をとってから22年間、二輪車を含めれば24年間、公道上で大きな事故には遭っていない。バンパーを擦る程度の軽いアクシデントはあったが、人身事故や、クルマが修理工場に入院するような事故は回避できてきた。もちろん、幸運に恵まれたという面もあるだろう。が、クルマを運転するにあたって実践してきた一つの鉄則が無事故に大きく役立ったのは間違いない。
その鉄則とは「常に1秒の余裕を持つ」ということだ。自動車事故の大半は、1秒というわずかな時間のなかに凝縮されている。見通しの悪い交差点での出会い頭の衝突事故はもちろん、追突事故も、あるいはカーブを曲がりきれずにセンターラインをオーバーして正面衝突といった大事故も、ほとんどは1秒早く気づき、1秒早くアクセルを戻し、1秒早くブレーキを踏んでいれば起こらなくてすむ事故なのだ。ちなみに、時速50kmで走行していてもクルマは1秒間に14メートルも進む。この距離を考えただけでも「1秒の重み」を理解して頂けるのではないだろうか。
1秒早く注意の目を向け、1秒早くアクセルを戻し、1秒早くブレーキを踏む。このように、1秒という時間をあらゆる面で大切にし、1秒早く動作を起こすことを自分の運転のキーワードにしていくことが、事故を防ぐための最大のポイントであることをぜひ覚え、そして実行してほしい。反射神経が衰える中高年ドライバーの場合は、1秒を1.5秒とか2秒に読み替えるといいだろう。
資料提供:日産自動車
この連載のバックナンバー
- “1秒の重み”への理解がクルマの安全性をより高める (2006/03/24)
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