後席シートベルトは着用しなくても安全なのか
もし、シートベルトの重要性を理解していれば、多少面倒でもシートベルトをするのは当然だ。後席シートベルトをしない最大の理由は、やはりユーザーの安全意識の低さや、知識の無さにあると考えるべきだろう。確固たる根拠もないまま、「後席は安全だ」と思い込んでいる人は意外に多いし、多少安全に感心のある人でも「後席なら前席シートがクッションの役割を果たしてくれるはず」という誤った認識を持っていることが多い。もちろん、軽い衝突なら前席シートがクッションの役割を果たしてくれるだろう。しかしその程度の衝突なら、たとえ前席でシートベルトをしていなくても重傷事故にはならない。問題は、早い速度で衝突した際の安全性である。
以前、欧州のクルマメーカーで安全技術開発を担当しているエンジニアから衝撃的な事実を聞かされたことがある。アウトバーンで起こった死亡事故で、不幸にも3人の乗員すべてが亡くなったのだが、検死の結果、前席乗員の肝臓から後席乗員の前歯が出てきたという。その他にも、後席乗員の頭部が前席乗員の頭部を直撃したり、後席乗員の膝が前席乗員の脊椎を砕いたりする事故が多発し、それを受けドイツでは後席乗員のシートベルト着用が義務化された。ハイスピード領域での事故は、われわれの想像をはるかに超えた衝撃を乗員に与える。たとえ日常的な速度でもダメージは深刻である。50km/hで走る2台のクルマが正面衝突した場合、シートベルトをしていない後席乗員は体重のおよそ30倍の力で前席シートに激突する。体重が50kgなら1.5トンの力がかかることになる。
シートベルト非装着者による前席乗員への加害性は、実際の事故データでも裏付けられている。正面衝突事故における運転者の死亡重傷率は、後席シートベルト着用時の1.48%に対し、非着用時は3.02%と一気に倍増する。
後席シートベルト着用状態で変わるドライバーの死亡重傷率
*出典:(財)交通事故総合分析センター刊「イタルダ・インフォメーション No.27」より(平成7年から平成11年までの5年間の交通事故統合データより抽出)
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