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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

第95回
社会主義色が濃厚になったオバマ大統領の施策

国際問題評論家 古森 義久氏
2009年3月3日

 米国のバラク・オバマ大統領が矢継ぎ早に打ち出す経済面での施策が、米国全体を大きく揺るがせ始めた。まさに大激震である。米国の改造の試みともいえそうだ。歴史的ともされる深刻さの経済不況を克服しようとする至上の使命があるにせよ、米国史上でも最大額、最大赤字額の連邦政府予算案は不況対策を超えて、「大きな政府」の定型をしっかりとここで樹立しようという野心的な試みにみえる。

 ひょっとして実務的な中道路線を進むのではないかともみられていたオバマ大統領は元来のリベラル派としてのイデオロギー色までを鮮明にし、レーガン大統領の「保守主義革命」を覆す社会主義色がにじむ「リベラル革命」を意図するのだ、という見解も保守・リベラルの両陣営で広まってきた。

 オバマ大統領は1月20日の就任以来、金融危機や経済不況への対処を最優先課題として、破綻する民間大企業の政府による救済や管理を進め、景気対策費としては総額1兆ドル近い公費を投入して、民間に大胆に介入した。救済企業の幹部の給料を制限するという措置をとる一方、一部の銀行の国有化案までも打ち上げた。

 そのうえに2月26日に同大統領が議会に提出した今年10月からの新年度予算の内容がものすごかった。政府予算としては史上最大の総額3兆6000億ドル、2009年の米国のGDP(国内総生産)の28%に達し、2008年度の同比の21%より大幅に増えることとなる。同時に財政赤字も2009年には1兆7000億ドル、GDPの12%を超えると見積もられる。予算の総額も財政赤字の総額も、それぞれの対GDP比も、戦後最高となる。まさに巨大な政府の出動なのだ。

 この巨額の公費支出の計画も第一には景気を刺激し、雇用を増すという緊急経済対策としての意図が大きいといえるが、予算の内容をみると、オバマ大統領は明らかに単に目先の不況対策だけではなく、政府の役割を徹底して拡大し、政府が民間に大胆に介入して、政府と国民との関係を変えようとする目的があらわだといえる。なぜならこの予算案には米国でのリベラリズムの「大きな政府」の象徴とされる国民医療皆保険の実現への大きな一歩といえる諸経費が6300億ドルも計上される一方、環境保護や教育という領域でも政府の役割拡大と民間規制のための巨額の資金が支出されることになっているからだ。

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