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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

第94回
ヒラリー訪日の意味

国際問題評論家 古森 義久氏
2009年2月17日

 米国のオバマ政権のヒラリー・クリントン新国務長官が16日、日本を訪れた。インドネシア、韓国、中国というアジア4カ国歴訪の最初の訪問先が日本となった。クリントン長官は日本では17日から麻生太郎首相はじめ政府高官や民主党の小沢一郎代表らとの一連の会談にのぞみ、「日本重視」や「日米同盟重視」のメッセージを発信し始めた。日本側でもクリントン長官が最初の外国歴訪にアジアを選び、さらに日本をその最初の訪問国としたことを「日本重視」の証拠だとみなす向きも少なくない。

 だがクリントン外交、ひいてはオバマ新政権の外交が本当に「日本重視」なのか。クリントン長官訪日のレトリック(修辞)を差し引き、オバマ政権の外交姿勢全体を眺めると、かなり異なる構図が浮上する。オバマ政権の対外戦略全体のなかでアジアとか日本がどのように位置づけられるのか。その実態を冷徹にみておくことは日米関係の現実的な運営のためにも、欠かせない。ではクリントン国務長官の訪日の真実とはなんなのか。

 米国の新政権の新国務長官が初の外国訪問先にアジアを選んだというケースは確かに近年、例がない。まずはその事実からオバマ政権のアジア重視、あるいは日本重視という観測が生まれたのだといえよう。しかしここでまず明確にしておかねばならないのは、米国の外交での「重視」の意味である。日本重視、欧州重視、中東重視などなど、重視とは文字どおりに解釈すれば、重く視ることであり、重要だとみなす、という意味だろう。

 だが重視という言葉には大ざっぱにみれば、二つの意味がある。一つはとにかく米国にとっての潜在、顕在の脅威であり、トラブルのもとである国だから重くみざるを得ない、という意味の重視である。北朝鮮やアフガニスタンなと、その代表だろう。もう一つは米国にとって貴重だから大切にし、重くみる、という重視である。英国やイスラエルがその典型だといえる。日本が重視されるとすれば、米国の同盟国なのだから、後者の範疇となることは当然だろう。他方、中国は前者に近いであろう。

 日米同盟に関していえば、ブッシュ前政権は間違いなく重視したといえよう。安全保障上の日本とのきずなを対テロ戦争でも対中国政策でも重くみて、その強化に常に努めていた。貿易問題その他で日本に対する不満があっても、安保の要因に配慮して、不満の表明を一定限度に抑えようとした。北朝鮮政策でも日本の拉致問題に神経を配っていた。ただしブッシュ政権の最終時期だけには、北朝鮮のテロ支援国家指定の解除によって、日本重視の基本路線を崩した観は否めなかった。

 こうした背景を踏まえて、クリントン国務長官のアジア歴訪への意味づけを眺めてみると、まずしきりに語られる観測は、「国務長官としての初の外国訪問先をアジアに選んだからアジアを重視しているのだ」という趣旨である。ところがこの点についてはまったく異なる指摘をワシントンで複数の米側関係者から聞いた。まず国防総省のアジア政策にかかわる高官がこっそりと以下のようなことを述べたのだった。

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