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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

便益を与える見返りに政治的要求を貫徹

 同報告が中国の国家ファンドの市場原理を無視する政治活動の代表例として指摘したのがコスタリカへの金融活動だった。その実態は次のようだったという。

 コスタリカは中米の人口500万ほどの国だが、民主主義が定着し、バナナの生産が世界第二位と、経済的にも中米にしては豊かな部類である。中国の国家ファンドのSAFEは2008年1月、このコスタリカの政府債を1億5000万ドル、通常より低い金利で購入した。そのうえに来年1月にはさらに1億5000万ドル分の同じ政府債を買う契約をも結んだ。コスタリカ政府にとっては商業的には極めて有利な取引だった。ところがこの政府債売買の裏には、コスタリカ政府が台湾とのそれまでの外交関係を断絶して、中華人民共和国と国交を新たに樹立するという秘密の合意が存在していた。コスタリカはそれまで63年間も台湾との国交を保ってきたのだ。だが大量な政府債を有利な条件で買ってもらうことの代償にその国交を断ったのである。つまり中国が国家ファンドを使って、外交上の目的を果たしたのだった。

 その一方で中国の国家ファンドの責任者たちは公式には市場原理に反する投資行動はとらないと宣言し、政治や軍事の目的は全面的に否定する。だが米側の同報告はSAFEやCIC、さらには両機関の下部組織が最近、(1)フランスの大手石油企業トタルの株25億ドル(2)イギリスのブリティッシュ・ペトロリアムの株20億ドル(3)オーストラリアの3銀行の株合計2億ドル――などを市場原理に合致するとは思えない条件下で購入していたが、中国側の当事者たちは当初、みなその取引を否定していたという不透明な経緯を報告し、市場原理をゆがめる実例として警告を発していた。

 そのうえで同報告はこの種の中国の国家ファンドがとくに金融市場が開かれた米国に流入しやすく、米側の金融機関から軍事関連産業、ハイテク企業まで内部へ侵食していく危険性を強調していた。米国の国家安全保障が中国のこうした「政治資金」によって脅かされる可能性への警告だった。日本にとっても対策を考えるべき新たな金融脅威といえるであろう。

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