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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

超リベラルだった上院時代のオバマ氏

 オバマ氏のそうした暗の部分に光をあててみよう。

 オバマ次期大統領に懸念を抱く側はまず彼の上院議員時代の政治傾向に視線を向ける。前述のようにオバマ氏は行政も立法も経験が少ないから、どうしてもわずか3年余りの連邦議会上院での活動歴が指針となる。

 オバマ氏は上院議員全体のなかでも「議員全体100人のうちでも最もリベラル」と判定されていた。議会専門雑誌や労働組合諸団体による判定だった。議員としての投票傾向や発言内容、法案提出状況などを総合的にみての政治志向の認定だった。この場合のリベラルとは、「大きな政府」策に基づき、政府の民間への介入や規制を増すことを主唱し、経済面での自由競争や福祉面での自助努力を抑えようという思考である。対外面では軍事を軽視し、対話や協議を優先させ、同盟関係よりも多国間関係を重視する。上院議員としてのオバマ氏は米国のイラク介入に激しく反対し、イラクからの米軍の早期撤退や戦費の大幅削減を唱えていた。

 オバマ上院議員はさらに労働組合に支援されているから「アメリカ労働者の雇用」を極端に重視し、一連の自由貿易協定に難色を示した。オバマ氏は大統領選に立ってからも北米自由貿易協定(NAFTA)に反対を表明しながら、カナダの政府には「本音ではないから心配するな」とひそかに告げていた事実が一部メディアに漏れて、あわててカナダ政府への言明を否定するという一幕もあった。

 オバマ上院議員は外国に生産施設を移すために対外投資を増やすアメリカ企業には特別の課税をするという上院法案にも共同提案者となっていた。要するにオバマ氏は保護貿易主義へ明白に傾斜し、労働組合への配慮から外国投資まで抑制するという過激リベラル志向をいやというほど、見せてきたのだ。健康保険に関してもオバマ上院議員はアメリカ国民の多数派がなお「社会主義的」だとして否定的な政府による国民皆保険への賛同を唱えてきた。

 その一方、オバマ氏は大企業への批判的な傾向を示し、キャピタル・ゲイン税や法人税の引き上げを奨励してきた。「富や所得の再配分」というのも好みのスローガンだった。税制では高所得層への税金の率を思い切って高くして、多額の累進課税をし、その分の税収入増を低所得層に減税や福祉という形で「再配分」するという仕組みを推進していた。共和党側からは「社会主義的税制」と批判された。

 環境問題に関連してオバマ氏は上院議員としてはアメリカ大陸沿岸海域での石油開発に反対していた。原子力発電所の建設にも難色を示し、従来の禁止令を保つことに賛成するという態度だった。いずれもリベラル派としてのスタンスである。

 社会問題でもオバマ氏は妊娠中絶や同性愛結婚には寛容というリベラル派の基本姿勢が明確である。安全保障に関してはオバマ上院議員は軍事力増強につながる措置にはいつも反対し、核兵器の廃絶というようなことまで唱えた軌跡がある。大統領候補となってからもイランや北朝鮮の核武装問題に対して、「私自身がアメリカ大統領としてそれぞれの相手国の首脳に一切の前提条件をつけずに個別に会談し、問題の解決を図る」と言明して論議を呼んだ。オバマ大統領がなんの前提条件なしに「無法国家」の北朝鮮の金正日書記らと首脳会談をする、というのである。これまたリベラル融和外交といえよう。

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