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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

未知の要素に入り混じる不安と懸念

 連邦議会の上院議員をわずか3年ほど務めたという公務だけが国政レベルでの経験としてはすべて、というオバマ氏が一気に大統領に当選したことは、文字どおり驚異的な偉業だった。オバマ氏の政治デビューは彗星のようだった。その選挙での戦いぶり、そして勝ちぶりは異例の才の劇的な成果として米国の政治や選挙の歴史に特筆されるだろう。特徴としてはまず天賦の弁舌の才である。よく「黄金の舌」と激賞されるほど演説が上手なのだ。語調に静かな低音の抑制を効かせ、明確で穏健に響くメッセージで聞く側の心を和らげる。わかりやすい表現での直截の訴えは理と情の両方を同時に実感させる。

 オバマ氏は現実の政策面ではブッシュ路線の否定以外には具体的な主張が意外なほど少なかったが、基本方向として「変革」と「希望」という言葉を繰り返し、スローガンとして唱えた。とにかく今のブッシュ政権の政治環境からの「変革」を主張し、現状を閉塞としてとらえ、それを打破する「希望」をアピールしたのだった。

 しかしそんなオバマ氏も経験の不足を批判され、とくに対テロ戦争やイラク民主化ではマケイン氏に押されて、守勢にまわった時期もあった。9月はじめ、アラスカ州の女性知事サラ・ペイリン氏を副大統領候補に得たマケイン氏に支持率では一時期、リードされたこともあった。だがオバマ氏は9月中旬からの津波のような金融危機により米国民の支持を一気に高めてしまった。金融危機に対し共和党ブッシュ政権の政策ミスの結果だと非難し、同じ共和党のマケイン氏の政策や思考をブッシュ政権のそれと重ねあわせて、一般国民に向かい、「原因」だと訴えたのだった。この作戦はマケイン氏が経済や金融が苦手ということもあり、大きく功を奏した。

 

 だがもう間近に迫ったオバマ新政権の統治に対し、米国内には明らかに不安や懸念も広範に存在する。なにしろ約5700万人の米国民はオバマ氏ではなく、マケイン氏に票を投じたのである。ウォール街の反応をみても、ニューヨークの株価はオバマ氏当選のその日から下落に下落を続け、ダウ平均株価は1週間で14%の下げという次期大統領が決まった最初の1週間としては歴史上最大幅の下落を記録してしまったのだ。もちろんオバマ氏の当選だけにその原因は帰せられないが、株式市場が同氏の当選を大きなプラス要因とはみなかったことの例証だろう。

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