正面に出てきていた中国系団体
今回の慰安婦決議案については、もっぱら表面に出たのは「ワシントン慰安婦連合」という韓国系団体だった。「中国系」の存在は米国でも日本でもほとんど報じられることがなかった。ホンダ議員周辺でもむしろ中国系の影響を否定するような動きが目立った。
ところが現実には、この決議案が日本側の反発やダニエル・イノウエ上院議員の反対で停滞するような気配をみせたころから、抗日連合会はかなり思い切った行動をとるようになっていたのだ。抗日連合会が慰安婦問題で堂々と正面に出てきたというケースはじつは意外と多々あったのである。
その実例の第一はニューヨーク・タイムズに掲載された意見広告だった。
5月28日に掲載されたこの広告は慰安婦決議案への支持を表明し、議会に対しその採択を迫る内容だった。「安倍首相は『日本軍の性的奴隷』のどこを理解できず、謝罪ができないと言うのか」と書かれ、「何十万もの女性が性的奴隷へと強制徴用された」と断じられていた。この意見広告の掲載主として抗日連合会の名が堂々を記されていたのである。そのウェブサイトのアドレスも大きく明記されていた。
第二の実例はカナダ議会での抗日連合会の動きだった。
カナダでは下院に米国と同様に慰安婦問題で日本を糾弾する決議案がこの3月に出された。中国系カナダ人の議員が提案したのだが、その動きを抗日連合会のカナダ支部が表面に出て支援した。というよりも抗日連合会の意図を代弁して、その中国系議員が決議案を出したという形だった。
この決議案は下院外交委員会の国際人権小委員会では僅差で可決され、外交委員会に回された。だが同外交委員会では反対論が多く、5月10日には「さらなる調査をすべきだ」として国際人権小委員会に差し戻されてしまった。事実上の廃案だともいえる。だが抗日連合会はここでも正面に出たのだった。
第三の実例は、抗日連合会の前述のイグナシアス・ディン副会長が米国下院のトム・ラントス外交委員長に脅しをかけたという報道である。
カリフォルニア州の通信社「ベイ・シティ・ニューズ」の6月14日の報道によると、抗日連合会の幹部たちは同連合会本部のある同州クパナティノで集会を開き、「ラントス委員長が慰安婦決議案を敏速に進めようとせず、アジア系米人社会への軽侮を示している」という主張で一致した。
ディン副会長は抗日連合会を代表して「ラントス議員がもしこの決議案の採決を急がないならば、アジア系有権者が33%を占める同議員の選挙区で次回の選挙では民主党候補としてアジア系女性を立ててラントス氏の落選を目指す」と言明したというのだ。これは圧力というよりも、もう脅しといえるだろう。ラントス議員はこの後、あわてふためいたように決議案の採決へと動いたのである。
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